01.16
スタンレーのタンブラーに全米が熱狂する理由
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今、アメリカを中心に熱狂的な人気を集めているタンブラーがあるーー
創立100年以上の老舗水筒ブランド、「Stanley(スタンレー)」の持ち手付きタンブラーだ。
2024年の年始、スタンレーはスターバックスとコラボし、バレンタインデー仕様のピンクと赤のタンブラーを大型スーパー「ターゲット」で限定販売した。
この商品は大きな反響を呼び、タンブラーを手に入れようと、発売前日から店の外で野宿する人もいたほどだ。TikTokに投稿された動画では、タンブラーをゲットしようと店の通路を走る、熱狂的なファンたちの様子が映し出されている。
最も人気とされる容量1.18Lのタンブラーは、1つ45ドル(約6522円)。人々はそれを求めて我こそがと競り合った。
この新たなスタンレータンブラーは、「コスモピンク」と「ターゲットレッド」の2色展開で、すでにeBayなどの転売サイトでは、2色セットで300ドル(約4万3000円)以上の価格で掲載されている。
スターバックスの担当者が「再入荷はない」と発表したことを考慮すると、驚きでもない。
ただのタンブラーに、なぜそこまで熱狂するのか…?
以下では、なぜ人々がこのタンブラーに夢中なのかを解説しよう。
SNSでの評判
スタンレーのタンブラーに対するミレニアル世代やZ世代の女性(そして最近では10代前半の若者まで)の間での熱狂は、SNS、特にTikTokで始まった。そこでは、ユーザーたちがスタンレーのすべてを称賛し、タンブラーをアップグレードするために買った様々なアクセサリーを披露している。
this whole stanley thing is really starting to feel like a cult bc why would you need all that for a tumbler? pic.twitter.com/m3X1PPxytL
— tofu⁷ 🍜 ia📚 (@milktealattae) January 4, 2024
このタンブラーを囲むファンダムは、パウダーなどを加えて「スパ・ウォーター」や「バースデーケーキ・ウォーター」を作る「Water Tok」というトレンドとマッチする。
Hydro FlaskやYETIなども多くのファンがいるが、スタンレーの熱狂的ファンたちには及ばない。
あるTikTokkerは動画で、「スタンレータンブラーがなぜそこまで画期的なのか説明します。わかってます。あなたはきっと、タンブラーはもういらないと思っているでしょう。でも、このタンブラーは必需品です」と話し、持ち手があることや、車のカップホルダーにフィットすることの利便性を語った。
スタンレーのタンブラーに関するコンテンツは現在、TikTokで5270万回以上の視聴回数を記録している。老舗ブランドにとって、これだけの若年層に刺さっていることはかなりの驚きだ。
若者向けの消費者トレンド分析家のケーシー・ルイス氏はBusiness Insiderに対し、「私が11歳のときは、人形を欲しがっていました。でも今の11歳の子たちはスタンレーのタンブラーを欲しがるんです」と述べ、「子どもたちがプレゼントにタンブラーをもらって嬉し涙を流しているのには驚きです」と続けた。
オンラインショッピングブログとInstagramアカウント「Buy Guide」の共同創設者であるアシュリー・ルスーア氏は、トレンド到来よりかなり前の2017年からスタンレータンブラーを使っている。
同アカウントは2017年、スタンレータンブラーについて「すべての断熱カップの中で、これが1番です。信じて」と紹介し、飲み物の保冷性や、ストロー、持ち手、食洗機対応などの特徴を絶賛している。
ルスーア氏は、スタンレーブランドの評判と、映画「バービー」公開後のピンク人気を考慮すると、新しいピンク色バージョンが売り切れたことに驚きはないとハフポストUS版に述べ、消費者たちにとって、色がとても重要であると説明した。
「スタンレータンブラーの人気は最近始まったものではありません。2021年にもスタンレーのウェブサイトには、タンブラーの再入荷通知のウェイトリストには3万人が並びました」
「希少性の原理」を活用した完璧な例
かつて爆発的に流行したおもちゃ「ファービー」を彷彿とさせるスタンレータンブラーへの熱狂は、明らかに希少性の原理が働いている。レアな商品や限定版の存在は、購入者にとっては驚くほど効果的だ。
「スタンレータンブラーは、希少性が高いものの手頃な価格であることが、『手に入れなきゃ』という感情を一気に高まらせます」と話すのは、グローバル経営コンサルティング会社A.T.カーニーで消費者研究所リーダーを務めるケイティ・トーマス氏だ。
「希少性の原理はよくラグジュアリー商品と関連付けられますが、それこそがまさに一般層を魅了する理由です。手頃な価格ながら、他の人々が持っていない特別なものを手に入れる感覚を与えるのです」
タンブラーが欲しくなるのは帰属欲求から
消費者洞察研究者のハンナ・シャムジ氏は、人々が購入しているのはスタンレータンブラーではなく、スタンレー「クラブ」に入るためのチケットだという。
「人々はスーパーでタンブラーを求めて熱狂しません」とシャムジ氏は述べ、人々が求めているのは、認められたい、受け入れられたいという帰属意識だと説明する。
これはステータスの追求であり、悪いことではない、とシャムジ氏は話す。「ステータスは購入行動のとても強い動機であり、それは基本的な人間の欲求、つまり帰属欲求によって引き起こされます」
多くの人々がスタンレータンブラーについてSNSで投稿するのも、こうした理由に起因するという。彼らは会話の一部になり、この熱狂に参加したいのだ。
ファンはSNSでタンブラーを称賛するが、人々が商品を購入したり、商品が数分で売り切れたりするのは、商品の特徴や機能性が理由ではない、とシャムジ氏は解説。タンブラーは1つあれば十分なのに、人々が複数の色を買う理由についても説明した。
「TikTokで見たある女性は、全色のタンブラーを持っていました。まさにスタンレータンブラーのレインボーです。その女性が全色購入するのは、必要性や機能性ではありません。それは論理的な購入決定ではなく、感情に基づいたものです」
シャムジ氏は、スタンレータンブラーは社会的な通貨であり、見せびらかすためだと話す。
人気はピークに達したか?
スタンレータンブラーへの興奮は今後も続くのだろうか?
前出のトレンド分析家ルイス氏はBusiness Insiderに対し、スタンレーはここから下降するしかない、と述べている。
「若い子どもたちや10代前半がそのトレンドや製品を取り入れると、10代半ば以上やZ世代は距離を置くようになります」と彼女は話す。
手頃な価格な上、クールでトレンドの波に乗っているという社会的地位を示す商品は市場でよく売れるものの、欠点もある。誰もが持っているものを欲しがる人はいない、ということだ。
南カリフォルニア大学心理学准教授で消費者心理学を専門とするスティーブ・ウェストバーグ氏は、「スタンレーのようなブランドにとってのリスクは、それが普及しすぎた結果、周りのみんなより一歩先行くための象徴ではなくなってしまう可能性があります」と解説する。
「また、みんながこのようなタンブラーを必要としているわけではなく、必要でも1人1つ以上はいらないので、市場全体のボリュームには限りがあります」と続けた。
一方、「社会的要因がもはや販売を牽引しなくなったときには販売量が減少すると思いますが、それでもただ単に素晴らしいタンブラーということだけで商品棚に並べる価値があります」と商品の品質とその価値に言及した。
ファービーからタンブラーまで、人々が引き寄せられ、絶大な人気を集める商品は常に存在する。
とはいえ、その『トレンド商品』が意図する機能も高品質でなければならないとトーマス氏は述べる。
11月には、炎上した車からほぼ無傷のスタンレータンブラーが発見されたことが話題となり(しかも中にはまだ氷が入っていた)、タンブラーの耐久性が思わぬ形で証明された。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
Source: HuffPost