2024
01.03

はこねのリラックマが、箱根駅伝の沿道応援に立ち続ける理由。4年ぶりに帰ってくる

国際ニュースまとめ

今年も始まった箱根駅伝は、「特大サイズのぬいぐるみ」が沿道応援に現れることでも知られている。

はこねのリラックマだ。

テレビ中継に映り込む姿が風物詩として親しまれてきたが、コロナ禍は自宅応援に徹した。3年ぶりに沿道応援の自粛要請がなかった2023年大会も「通常の状況に戻っていない」と現地に行かなかった。

そんなはこねのリラックマが1月3日、4年ぶりに沿道応援に立つ。

「色物的な沿道応援の“元祖”」と言えるはこねのリラックマに、これまでの変遷、箱根駅伝や沿道応援の魅力を聞いた。

復路6区に登場するリラックマ

箱根駅伝の復路6区、箱根湯本駅の手前にある函嶺洞門。

ランナーがバイパスの大きなカーブを曲がり終えるタイミングで、沿道にいるはこねのリラックマが顔をのぞかせる。

人の上半身がすっぽり隠れてしまうほどの特大サイズのリラックマが、中継画面のはしっこで、踊るようにぴょんぴょん跳ねる。

なんとも言えない存在感を放っているが、どこかほっこりもする。

毎年同じ場所で「変わらぬ姿」を披露し続けると、次第にネットやSNSで話題となった。じわじわと認知を広げ、今では登場を待ち望むファンもいる。

「リラックマのような愛されているキャラクターが箱根駅伝に登場することで、これまで箱根駅伝に興味がなかった層に注目してもらうことが目的です。そして私たちのような色物の沿道応援をきっかけに箱根駅伝を見るようになった人が、お気に入りの選手や大学を見つけて応援するようになるなど、見る人の角度から箱根駅伝を楽しいと思ってもらえるきっかけづくりができたら、こんなに嬉しいことはない。それがはこねのリラックマとして沿道に立ち続けるルーツになっています」

はこねのリラックマさんがそう口をひらく。

なぜ リラックマ?始まりは15年前

はこねのリラックマさんによると、始まりは15年ほど前。知人がきっかけだったという。

「たまたま知人の実家が箱根駅伝のコースの近くにあり、『せっかくだから』と誘われ沿道に出たら、選手が一生懸命走られている姿に胸を打たれてしまいました。東京から箱根という途方もない距離を、大学のプライドをもって人の力だけでひた走る。『これは私たちも必死で応援せねばいかん』と」

翌年、選手たちにしっかりと声援を届けたいと、知人と2人で函嶺洞門に向かい、「はこねのリラックマ」が沿道デビューを果たした。

「知人の家にたまたまリラックマのぬいぐるみがありました。みんなが知っていて愛されているもので、何とも言えない『ゆるさ』があり、老若男女に『何だあれは』と関心を持ってもらえる。今思えば、リラックマの存在は今の応援スタイルにぴったりでした」と明かす。

初代「はこねのリラックマ」は座布団サイズだったという。

より箱根駅伝の楽しさをお茶の間に届けるため、次の年、いまの大きさの2代目「はこねのリラックマ」が生まれた。

「このときから同じリラックマとともに沿道応援に参加しています。定期的にお風呂に入浴させ、15年ほど掲げ続けています。とても良い優しい抱き心地です」

「画角の隅にお邪魔させてもらっています」

はこねのリラックマとして沿道応援を始めた当初は、ランナーは函嶺洞門のトンネル内を走っていた。その脇の沿道に登場し続けると、「何者だ」とネット上で噂になり始めた。

函嶺洞門函嶺洞門
函嶺洞門函嶺洞門

2014年に函嶺洞門が閉鎖されて以降は、迂回するバイパスのカーブ付近に応援場所を移した。「今年もいた」などとSNS上で目撃報告が増え、ファンの間で親しまれる存在になった。

「最初は賛否両論どころか、どこからも関心を持たれない状況でした。しかし、選手や大会運営に対するリスペクト、箱根駅伝の魅力を伝えることを何より一番として、沿道応援の安全やマナー呼びかけなどをコツコツと積み重ね、発信することで、前向きな意見と多くのご支持をいただけるようになりました」

はこねのリラックマさんは、沿道応援する上で「安全第一。選手に迷惑をかけない」よう気をつけている。

「沿道応援される人たちのごく一部ですが、危険行為やマナーを逸脱した振る舞いで大会運営に迷惑をかけてしまっていることがあります。本来、声援は選手の頑張りや箱根駅伝の盛り上がりを後押しするものでなければなりません。はこねのリラックマは色物的な沿道応援の“元祖”にあたりますので、モラルある沿道応援を自ら実践し、大会を盛り上げる雰囲気を自然と醸成できるよう発信しています」

「ぶつからないよう周囲への安全配慮はもちろん、コミュニケーションを取ってみんなが気持ちよく声援を投げかけられるような環境づくりに配慮しています。また、中継映像に映る前に周囲確認をし、運営の妨げにならないよう最大限配慮しながらスポットを定めて応援しています」

ランナーや沿道応援する人たちの安全に配慮しながら、はこねのリラックマの姿を届けるため、“ロケハン“もしているという。

「カーブを走る選手を映すため、撮影者はクレーンカメラを道路の形状に沿って舐めるように動かさないといけません。その動きを理解し、現在はその画角の隅に、ひょっこりとお邪魔させていただいています。もちろん選手たちを隠すようなことがあってはならず、その結果『今年は映らなかった』ということが起きてもしょうがない、と思っています」

自宅に函嶺洞門を再現した

毎年欠かさず沿道に立っていたが、コロナ禍が直撃した。2021年大会は初めて「沿道応援の自粛要請」が出され、従うことに決めた。

「箱根駅伝に注目し続けてほしい」と自宅応援会を企画し、箱根駅伝中継を映したテレビの前に小さなリラックマの大群を走らせた。

投稿動画では、ミニリラックマ同士がぶつかって転倒してしまっており「逆走、選手間の衝突、転倒など、波乱の展開でした。こんなはずじゃ…(´;ω;`)選手のみんなはこうならないようにがんばれ!!!」とエールをつづった。

次の2022年は「オンライン応援会」を開催した。

出場20大学と関東学生連合、「箱根駅伝応援本部」の計22人が参加しているという演出だ。

背景画像にはそれぞれの大学キャンパス写真を設定し、画面ごとに自チームを応援するリラックマを登場させる徹底ぶりだ。

「箱根駅伝応援本部」の画面には、はこねのリラックマとミニリラックマの大群がテレビ中継を見つめているところが映っている。

「出場大学のみなさまへ敬意を払う意味を込め、各大学のキャンパスにリラックマを表敬訪問させたように模し、箱根駅伝を盛り上げられるよう工夫しました。様々なデバイスとリラックマたちをあちこちからかき集め、ひとりで夜な夜な準備をしました」と努力を明かす。

前回2023年は、箱根駅伝の函嶺洞門を自宅で再現した。

箱根の山々に囲まれた函嶺洞門や、現走路のバイパスのジオラマを自作。走路には各大学のユニフォームが描かれた「ランナー」が配置され、沿道で3体のリラックマが応援している。

「どうやってみんなに箱根駅伝を知ってもらおうか、楽しんでもらおうかと悩んだ結果として、家にいながら臨場感のある応援ができるジオラマの製作に行き着きました。現地に行けないフラストレーションとエネルギーはすべてジオラマ製作にぶつけ、8時間ぐらいかけて一気に仕上げました(笑)」

函嶺洞門のジオラマ函嶺洞門のジオラマ

2023年の箱根駅伝は、マスク着用や声出し応援は控えるといったルールの下、3年ぶりに沿道応援の自粛要請はなかった。

しかし、はこねのリラックマさんは自宅応援を続けた。

「マスク着用や一定間隔を取るなどの制約があり、沿道応援自体の自粛が呼びかけられる時期でもありました。そして何よりも、選手の一番の応援者であるご家族でさえ沿道に立てないという辛い状況が続いていましたので、はこねのリラックマはみんなが気持ちよく箱根駅伝を応援できる環境に戻ってから沿道応援を再開しようと決心していました」

10年以上続けたら「感心」に変わる

そして2024年。新型コロナの分類が「5類」に引き下げられ、初めての箱根駅伝を迎えた。

はこねのリラックマさんは4年ぶりに、復路6区で沿道応援に立つ。15年ほど続けてきた「いつもの変わらぬ姿」を見せるつもりだ。

「同じ姿がそこにあるのは、見ている方にちょっとした安心感を届けることができるかなと。当初、アホらしいことやっているなと思って見ていた人も、10年以上も継続する姿を見たら、よくやるなあと『感心』に変わってくれるでしょう。毎年同じことを変わらずイキイキとやる。『頑張っているな』でも、クスッと笑われるでも、みんなが正月恒例の箱根駅伝を楽しみに見てもらえるきっかけになればと思っています」

はこねのリラックマさんはまた、自分の活動を通じて伝えたいこととして「ぜひ1度、沿道に立ってみませんか」と問いかける。

「沿道に立つと、選手の呼吸やうめき声でさえ耳に届く。歯を食いしばる苦しい表情からも、東京・箱根間の往復200キロ以上の距離を人の足が一歩ずつ進んでいるのだと肌で感じられます。選手たちが気力で繋いでいく母校の襷と誇りは、見ていてとても神々しいものです」

「応援する楽しさは、自分の言葉や気持ちを選手に直接届けられること。『〇〇選手行け!』『△△選手まであと何キロだ』と選手に呼びかけると、手を挙げて反応するなど、選手の背中がぐっと押されて次の一歩の踏み出しが強くなったような気がするのです。私たちの声で選手の背中を後押しすることができると思えるのが、沿道応援ならではの魅力です」

沿道に行けば、声を張り上げて応援する、はこねのリラックマの「いつもと違う姿」が見られるかもしれない。

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Source: HuffPost