12.23
渋谷のヴィーガン居酒屋に行ってみたら、唐揚げが美味しすぎて驚いた。お腹も心も満たされる「メニュー表」の仕掛けとは
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「ここはヴィーガンの人も、ヴィーガンじゃない人も満足できる居酒屋です」
そう話すのは、渋谷のヴィーガン居酒屋「真さか」の広報を務める鈴木真由さん。約3年半前からヴィーガンの食事をするようになり、「真さか」の唐揚げの味に惚れ込んで入社したといいます。
実際に行ってみると、週半ばの平日にも関わらず店内は満員。ランチメニューを見ると、「ちょっといいことをした」気分になれる仕掛けがありました。
ランチメニューに書いてあった仕掛けは?
渋谷パルコの地下1階。レストラン街を奥に進むと、「真さか」と書かれた赤い暖簾が見えてきます。20席ほどの広さの店内には、壁に手書きで餃子や冷奴などのメニューが並んでいて、気軽に入れる街の居酒屋のような雰囲気です。
ランチメニューは唐揚げ定食、餃子定食、ミックス定食、麻婆豆腐定食の4種類。
もちろんどれも動物性の肉や調味料を使わないヴィーガンメニューですが、それぞれ1100円〜1200円と、渋谷のランチメニューとしては平均的に思える値段が並んでいます。
せっかくなので少し欲張って、唐揚げと餃子のミックス定食を頼んでみました。唐揚げは数週類のソースも選べるようで、私は一番人気だという柚子マヨネーズを選びました。
スマホで注文する際、付け合わせのキャベツを付けるかどうかを選べました。付け合わせの野菜を食べない人も多く、食品ロスを減らすために付け加えた選択肢だそうです。
実際に食べてみて、特に驚いたのが唐揚げ。本当に肉を使っていないのか疑ってしまうほど、食感も味も鶏の唐揚げそのものでした。
柚子マヨネーズのソースも相まって、ガッツリ食べたい人も満足できるボリューム感です。
メニューをよく見てみると、唐揚げ定食の隣には「CO2 −20.2%」と書かれています。
餃子定食は「CO2 −14.5%」、ミックス定食は「CO2 −19.8%」、麻婆豆腐定食は「CO2 −25.7%」。
実はこれ、動物性の食材を使用した場合と比べて、このヴィーガンメニューはどれくらいCO2の排出量が少ないかを示したものだそうです。
このCO2排出量が書かれたメニュー表は、渋谷区の実証実験事業「Innovation for New Normal from Shibuya」に採択されたプロジェクトの一つ。
気候変動へ配慮する食のスタイル「クライマタリアン」を推進する情報サイト「Climatarian.jp」と、データを活用したDXコンサルティングを提供するMETRIKAによる、「飲食店メニューのCO2排出量可視化プロジェクト」の実証実験の第一号店として、「真さか」が協力することになったそうです。
実際に来店したお客さんにアンケートを取ると、「ただの美味しいヴィーガンのお店だと思っていたら、環境への配慮もしてるんだ」「本当に環境を良くしたいと思ってるんだと好印象になった」などの声が寄せられていると鈴木さんはいいます。
「アンケートを見て驚いたのは、『ヴィーガン=環境への配慮』と結びつけて考えている人が意外と少なかったことです。『食の選択によって環境へ影響があることを知っていましたか?』という質問に、20%の人が『知らなかった』※と回答しました」
また、「CO2排出量がメニューにあることで選択が変わるか」という質問に、約90%の人が「環境負荷が少ないメニューを選ぶ※」と回答したそうです。
「もちろんヴィーガン居酒屋にきているお客さんで、かつアンケートに答えてくださる方、というバイアスはあると思いますが、予想以上にポジティブに受け取ってもらえてびっくりしています。『メニューを選択するための要素が増えた』と喜んでいただけているようです」
満足感たっぷりの唐揚げと餃子の定食を食べて、しかもCO2排出量が少ない選択ができたなんて、ちょっと得した気分になりました。
(※データは12月13日時点)
クライマタリアンは、自分をご機嫌にする方法の一つ
実は、食が気候変動に与える影響が大きいことをご存知でしょうか?人間活動に起因する温室効果ガスのうち、約3分の1以上が食物の生産や加工などを含む、「食」にまつわるものだというデータも。
今回のプロジェクトを担当した「Climatarian.jp」が推奨する「クライマタリアン」は、そんな気候変動への影響を減らすために、温室効果ガスの排出量が低い食べ物を選択する食のスタイルです。
例えば焼肉に行きたい時、牛肉よりは温室効果ガスの排出量が少ないサムギョプサル(豚肉)にする、暖房器具を用いたハウス栽培の季節外れの野菜より、旬の野菜を選ぶ。
生産方法や住んでいる場所によってもそれぞれの食材の温室効果ガス排出量は異なるため、ヴィーガンやベジタリアンなどのような「何を食べて、何を食べないか」の決まりはないと「Climatarian.jp」のMayuさんは説明します。
「家での食事か外食の時だけ気をつける、 1週間に1回だけ、1ヶ月に1回だけでも気候のことを考えて食事を選択する人はクライマタリアンです」(Mayuさん)
そんなクライマタリアンの食のスタイルを、日々の生活の中で実践していくための仕組みを社会の中に作りたい。その第一歩として始めたのが今回のプロジェクトだといいます。
海外ではすでに研究も行われているようです。飲食店のメニューにCO2排出量を表示すると、低排出量のメニューを選択する人が増えるという調査結果も出ているとMayuさん。
「実際にプロジェクトを体験していただいた方から、『なんだかいいことをしたような気持ちになって、その日一日、ちょっと明るい気持ちで過ごせました』と言っていただいたこともあります。そんな風に、自分をご機嫌にする一つの方法として捉えていただけたら嬉しいです」(Mayuさん)
CO2排出量の計算などを担ったMETRIKAで広報を務める和泉麻耶さんは、こうした食の選択肢を増やしていく社会を作っていくためにも、今回のメニュー表のような「受動的に情報が入ってくる仕組みを作ること」が重要だと話します。
「自分から情報を取りに行く人は全体で見たら少ないと思います。見えていない情報を可視化することで『選択肢があるなら選ぼう』という人が増えると思いますし、消費者側の需要が増えることで、料理を提供する側(もしくは飲食店側)でも、大きな動きが生まれることを期待しています」
真さかでの実証実験は12月31日まで。アンケート結果の公表は2024年1月頃を予定しているそうです。
Source: HuffPost