12.11
<安倍派パー券不正>下村、塩谷、高木の3氏を新たに刑事告発 最新22年分でも不記載発覚 「安倍派はなんら反省していない」と専門家
政治団体「清和政策研究会」(以下、安倍派)が20万円を超えるパーティ券収入を政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載せず裏金化していた疑惑。公開されたばかりの2022年度分についても不記載が確認されたとして、安倍派の22年時の会長代理だった下村博文氏と座長の塩谷立氏、高木毅事務総長らが12月8日に東京地検に刑事告発された。これで刑事告発された安倍派の不記載額は計3290万円、被告発人は7人となった。告発したのは上脇博之神戸学院大学教授。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)
◆違法行為を「自白」した安倍派が
今回の追加告発は、11月に公開されたばかりの2022年分の収支報告書で新たに確認された不記載分。だが安倍派は報道を受けてこれらをすでに訂正している。それでは、なぜ上脇教授は訂正されたものをあえて刑事告発したのだろうか? その理由を告発状でこのように書いている。
「その訂正は「清和政策研究会」が明細の不記載等をしていたとの指摘及び取材を受けた等に対し行なったものであるから、当該各訂正は政治資金規正法違反の“自白”だと評しうるので、あえて告発するものである」(原文ママ)
要するに、上脇教授の調査や、最初に報道した「しんぶん赤旗日曜版」などの記事を受けて、安倍派が政治資金規正法(以下、規正法)違反だと認識したからこそ、修正したということだ。当事者の安倍派が違法性を認めているというわけだ。
◆安倍派、反省せず
今回追加で告発された安倍派の不記載額は、18年が50万円、19年が174万円、20年が152万円、21年798万円で合計1174万円。これまでの刑事告発と合わせた不記載額は18年が742万円、19年が848万円、20年が732万円、21年が804万円となった。
そしてこの11月末に新たに公表された22年分。「埼玉県柔道整復師政治連盟」「岩手県医師連盟」「東京都行政書士政治連盟」の3つの政治団体の政治資金パーティ券購入分の合計106万円が収支報告書に不記載であることを「しんぶん赤旗日曜版」が記事化したことで、
安倍派は訂正。またNHKなどが報道した「日本病院会政治連盟」の購入分28万円を含め計58万円についても訂正している。これら22年分の不記載の合計164万円についても今回追加告発されたわけだ。告発で分かった安倍派の18年以降の不記載額の合計は3290万円にも上った。
安倍派の22年分の収支報告書が総務省に提出されたのは23年4月25日。上脇教授が最初にパーティ券関連の不記載で刑事告発をしたのは1年前の22年11月である。つまり刑事告発を受け、報道もされてきたにもかかわらず、安倍派は不記載を繰り返していたわけだ。
「清和会は何ら反省していない」と、告発状では安倍派を厳しく指弾している。
◆なぜ企業のパー券購入は見えないのか?
告発状の最後に上脇教授はあえて「なぜ会社等の購入分の訂正がないのか?」という項目を書き、安倍派の収支報告書の問題点を指摘している。
これまで安倍派が訂正してきたのは、政治団体が購入してきたパーティ券分ばかりだ。それは購入した側の政治団体の収支報告書に記載されていて明らかになったからだ。
ところが企業や個人がパーティ券を購入した場合、20万円以下であれば現制度では誰がいくら購入したのか知ることができない。仮に不記載があっても指摘することができないのだ。指摘を受けないから安倍派は修正しないという構図になっている。
これだけ多くの政治団体からのパーティ券収入が不記載になっているにもかかわらず、会社や個人などからの購入分の不記載がないことについて、告発状は指摘している。
「訂正されたものに会社などの購入分が1つもないというのは、いまだに正直に訂正せず、世間に政治資金規正法違反の不記載の“自白”をしないのではないかと思えてならない」
◆パー券収入不記載は裏金作りの温床
上脇教授は今回追加告発した理由を次のように説明する。
「派閥にはパーティ販売ノルマがあり、所属議員がそれ以上に販売したら、『清和会』はそれを議員にキックバックし、派閥も議員もそれを収支報告書に記載していなかったという裏金づくりを朝日新聞がスクープ報道しました。それ以降、パーティ収入明細不記載問題よりもキックバックによる“裏金”問題に注目は移っています。
それでも私は明細不記載で追加告発をしました。その理由は、明細不記載と裏金作りは表裏の関係にあり、明細不記載を通じて裏金づくりが行われていたからです。ただ、裏金作りは、キックバック以外に議員が派閥にパーティ券販売を報告しない方法でも行われていると朝日新聞が追加報道したように、明細の不記載を通じて作られた裏金は、その一部です。
それでも、明細不記載の追加告発をしたのは、裏金全体のうち、明細の不記載を通じた裏金がいくらであるのか、その真相をできるだけ明らかにしたいからです」
◆政治資金報告のデジタル化の遅れがパー券不正の一因
「政治とカネ」の問題を調査するのは簡単ではない。収支報告書は、総務省と各都道府県の選挙管理委員会で、それぞれのサイトで別々に公表されている。また、収支報告書はPDFで公表されているため、数字をデジタル情報として取り出ことが非常に難しい。そのため、今回の事件のような不記載を見つけるには、明細書を一枚一枚対照させなければならず、膨大な時間と労力がかかる。長年不記載が放置されてきた一因となっている。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属
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Source: アジアプレス・ネットワーク