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今こそ「なりたい私」のキャリアを掴んで! LVMHのリカレント教育プログラムが「諦めない」を支援する
育児や介護などのライフイベントでキャリアが途切れても、あるいは何歳であっても、自身の能力を磨き、キャリアチャレンジできる学びの場を、LVMHが女性たちに提供している。
経歴不問、月16万円の生活支援を受けながら、ルイ・ヴィトンやディオール、ティファニーなどのハイブランドを擁するLVMHの美学や哲学、ファッション、美容に関する知識やスキルを身につける「ME LVMH JAPAN クライアント・アドバイザー・プログラム」。8カ月間のプログラムを修了後、希望者はLVMH傘下のブランドに就職できる。
世界最大のラグジュアリー集団は、なぜリカレント教育に力を注ぐのか。「ME」プログラムを立ち上げた LVMH JAPAN ピープル&カルチャー シニアマネジャーの山内彩さんに聞いた。
──「ME LVMH JAPAN クライアント・アドバイザー・プログラム」について教えてください
8カ月間のプログラムで、参加者は週に1日、東京モード学園/国際ファッション専門職大学でファッションや美容などに関する授業を受け、週に4日、店舗でメンターに付いて接客など販売業務を学びます。LVMH傘下のブランドや専門家からの特別講義もあります。
授業は1日3コマ、店舗での実働は1日5時間。キャリアにブランクがあると想定し、徐々に生活の変化に慣れてほしい、と短めの時間にしていて、マインドフルネスやメディテーションに関するワークショップも実施しています。
新しいことを始めてしばらく経つと、周囲と自分を比較して、私はダメだ、と思ってしまう時がきますよね。人と比べてしまう時に心を落ち着かせる方法、頑張ってきた自分を労るエクササイズ、未来の自分がどうありたいのかを落ち着いて考える時間、「ME」の卒業生から経験談を聞く場を設けるなど、参加者のウェルビーイングを意識して行っています。
自分自身が大切されることで、誰かを大切にする思いやりの気持ちが生まれてきますから。
授業料は無料。いま募集している2024年4月スタートの14名には、生活支援として毎月16万円+交通費を支給します。シングルマザーの方にも参加してほしいと考えており、支援団体の方から必要な生活費などを伺って、支給金額を決めました。
接客、販売を担当するクライアント・アドバイザー13名と、レザーを染色する職人1名を募集しています。
──なぜリカレント教育のプログラムを立ち上げたのでしょうか?
「ME(Métiers d’Excellence 素晴らしい職人技)」はフランスで2014年に始まりました。社会課題の解決とメティエ(職人技)の継承という視点に立ち、経済的な事情で進学できない、働くチャンスに恵まれない若者たちに向けた職業訓練のプログラムとして、イタリアやスイスなどヨーロッパで展開してきました。
日本でも「ME」をやってみよう、と考えた時に浮かんだのが、女性の復職支援、リカレント教育でした。傘下ブランドのメンバーたちと、日本では「女性の活躍」が大きな社会課題だから何かできないか、と以前から話し合っていたんです。
仕事を辞めてからのブランクが何年であっても、ラグジュアリーで働いた経験がなくても、意欲さえあれば、授業で学び、お店での経験を積んで就職できる。小さなレベルかもしれないけれど、LVMHが始めることで、他の企業にも波及するもしれない、そうして社会が変わっていけばいいな、と考えました。
日本では2021年にスタートし、2024年4月生で4期目となります。
──日本のジェンダーギャップ指数は、先進国の中で最下位です
まずは女性のエンパワーメントから。20歳以上の女性、性自認が女性である人で、「LVMHで働きたい」という情熱と学ぶ意欲があれば、経歴は問いません。
履歴書に「職歴」として書くことがなくても大丈夫です。学校やPTAでの活動だったり、地域でしてきたことだったり、何でもいいのでご自身の活動をモチベーションレターに書いていただければ、人となりが分かります。
LVMHでは、トランスジェンダーなど性的マイノリティを含めて、女性をみな平等に歓迎しています。そこに差はありません。また、社会課題という意味でも、マイノリティゆえに仕事が見つかりにくかったり、職場で働きづらさを感じたり、ということがありますよね。
私たちの会社には、性的マイノリティの方がたくさんいて、生き生きと働いておられます。
将来的には、男女、性自認に関わらず、低所得層の子どもたちに、世界が広がるようなチャンスを提供するプログラムもつくりたい、と考えています。
──応募に際して、ハイブランドに気後れする人もいるのでは?
キラキラした華やかなイメージが強いでしょうか。
ブランドの根底には、職人たちがいます。職人たちが、地道に、本当に良いものづくりを続けてきた歴史があって、その先に、作品への憧れを持つ人たちがいる。
ラグジュアリーの販売職は、デザイナーや職人が自らの哲学を形にした唯一無二の作品を、お客様の生活スタイルの中に届ける技術職です。必需品ではない高額なものを、いかにエキサイティングに、エモーショナルな体験として購入していただくか、ということには、お客様の想像以上の驚きを提案するクリエイティビティ、美的センス、人間性が問われます。
一流の販売員は、セレクションのプロであるのはもちろん、お客様の良き相談相手、エンターテイナーでもあります。そのために勉強を重ね、教養を身につけている。とても難しくて面白い、やりがいのある仕事です。続けるうちに、自分自身が鍛えられます。
ラグジュアリーとは何か、というお話をプログラムの初日にしており、キラキラだけではない、ラグジュアリーの深い部分を知ってほしい、と思っています。
──「ME」が目指すものは何でしょうか?
「ME」のゴールは卒業や就職ではなく、チャレンジです。現在は3期生が受講中で、1期、2期生あわせて12名が働いていますが、卒業後に就職を選ばず、学びを活かして自営業を始めた方、前職に戻られた方もいます。卒業しなかった方もいる。そうした方たちも含めて私たちは大切にしたい。選択肢があって自分で決断することが、何より重要です。
各ブランドで働く卒業生には、販売実績を上げながら自信を持って働いてほしいのはもちろんのこと、「諦めなかった女性」としてロールモデルになってほしい。プログラム参加者の多くは40〜50代。皆「私なんて」と諦めずに、新しい世界へ踏み出した女性たちです。彼女たちがロールモデルとなることで、人目を気にして「やらない」ほうへ行きがちな社会の当たり前が「やれる」「できる」に変わっていってほしいですね。
IT業界から身を転じた方、コロナ禍で事務職を失った方、育児で10年ほどブランクのあった方など、彼女たちのバックグラウンドは多様です。彼女たちが培ってきた経験、新鮮な視点や提案、貪欲に学ぶ姿勢などは、既存のスタッフの刺激になっています。
嬉しいのは、卒業生たちが次の「ME」のため動こうと「後輩が挫けないようコミュニティを作ろう」「経験を伝えよう」など、積極的に声を上げてくれること。
社会にポジティブなインパクトを与えることが、誰かの「美しく豊かに生きる喜び」になり、更に次の人へと「喜び」が循環していく。LVMHが大切にしている考え方に通じます。
──美しく豊かに生きる喜び、ですか?
フランス語でArt de Vivre(アール・ド・ヴィーヴル)、「美しく豊かに生きる喜び」をお客様に提供することが、LVMHのミッションです。
生き方の美学のようなものですが、提供するには、製品やサービスにとどまらず、世の中が美しく豊かになること、そのためにLVMHが貢献することが大切だと考えています。
そうした点からも、社会貢献、サスティナビリティ(持続性)、ダイバーシティとインクルージョン(多様性と包括性)への取り組みは、以前から続けています。
伝統を守り、100年、200年先に継承していくには、サスティナビリティが欠かせません。大量生産、大量消費とは違い、LVMHでは、製品を作りすぎることをしない。お客様に長く製品を使っていただくために、リペアの強化にも取り組んでいます。また、適正な価格が職人に還元される仕組みをつくっています。働く環境が悪ければ、長く続けられませんから。環境に配慮した原料や染色、照明や壁面の資材など細部に至る店舗のつくり方、廃材や制服のリサイクルまで、各ブランドの状況についてLVMHのサスティナビリティ・チームは常にチェックしています。
世界に75のブランドを傘下に持つLVMHならではの、ユニークな表彰システムもあります。ダイバーシティとインクルージョンに関する活動を、グローバルコミュニティの中で報告し合い、投票しているんです。例えばLGBTQの方や障害のある方たちの採用イベントに参加し、ニーズをシェアしてインクルーシブな面接方法に改善していくなど、他ブランドで良い結果を生んでいる内容を取り入れたり、「それならうちは」と別のアイデアを加えてみたり、良い意味で競争している。各ブランドが独立しつつ、グループにいるからこそのシナジーが生まれています。
LVMHで働く一人一人が、美しく豊かに生きる喜びを感じているか、ウェルビーイングに働けているかについても、チームで話し合っています。リテール(小売)の地位向上や、お客様に相対してパーソナライズされたサービスを届ける販売スキルの認知度を高めることにも、今後は更に力を入れていきたい。それは、よりイノベーティブに、より良いものを、お客様に、世の中に届けることにつながっていきます。「ME」の参加者たちとも一緒に、そういう未来を作っていきたいですね。
(取材・文=川村 直子/ハフポスト日本版)
プログラム参加ブランド
ファッション&レザーグッズ:「ベルルッティ(店舗、職人各1名)」「セリーヌ」「クリスチャン・ディオール・クチュール」「フェンディ」「ロエベ」「ルイ・ヴィトン」「マーク ジェイコブス」「リモワ」
ビューティー:「ゲラン」「パルファン・クリスチャン・ディオール」「パルファム・ジバンシイ」
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2023年12月17日、19日、21日、2024年1月10日
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Source: HuffPost