2023
10.21

<北朝鮮内部>農場現地からの最新報告(3) 都市からの「遠征盗賊」に苦しむ農村は厳戒態勢  農民は現金作りに四苦八苦 (最新写真4枚)

国際ニュースまとめ

畑の中に建てられた警備哨所に、民間武力「労農赤衛隊」の農場員とみられる男性が座っている。鴨緑江側を向いていることから、作物泥棒と住民の国境接近の両方を監視していると見られる。

アジアプレスでは9月後半に北朝鮮国内に住む取材協力者が咸鏡北道(ハムギョンプクド)のある協同農場を訪れて調査を実施した。ちょうど主食のトウモロコシの収穫の最中だったため、農場では、収穫物が盗まれないよう厳しく警戒していた。同時期に中国人の協力者が鴨緑江沿いで収穫期の平安北道(ピョンアンプクド)の農場の様子を撮影した。連載の3回目は、生産した穀物の流出について報告する。(カン・ジウォン/石丸次郎

咸鏡北道に住むアジアプレスの取材協力者A氏が現地調査したB協同農場は、農場員数約500人。主に主食のトウモロコシを栽培している。咸鏡北道では平均より若干小規模 だが、山がちで水田の少ない北部地域の典型的な農場だ。写真撮影は、中国人の取材協力者が9月後半に行った。国境の川・鴨緑江で遊覧船に乗って平安北道の朔州(サクジュ)郡に接近して撮影した。

畑の脇道に設置された粗末な監視哨所。赤いジャージ姿で歩いているのは収穫支援に動員された高級中学(高校生)の生徒のようだ

◆農村からの穀物流出は厳禁

以下は、現地調査したA氏との一問一答である。

――今年も農場からの収穫物の盗みはひどいですか?

数年前から、収穫期に都市から「遠征盗賊」がいっぱいやって来る。今年は取り締まりを厳しくしていて、盗んでも街に運ぶことが難しいので、農村現地で腹いっぱい食べようとしている。薬草採り、山菜採りのふりをして農村に近くまでやってきて、農場や個人の畑から穀物を盗んで山で焼いて食べるのだ。山林監督隊が除隊軍人の農場員を選抜して、山から接近できる農場の畑の警備を強化している。山で煙が上がるとすぐ出動させていた。

――穀物の都市への搬出が厳しいそうですね。
農場からの持ち出しは検問所で厳しく監視されるので、農民たちの中には、トウモロコシを蒸したり茹でたりして、市場の商売人に売ろうとする人が多い。加工したら穀物ではなく食品扱いになるからだ。農民たちは、なんとか早くお金を作ろうと、自分の家の畑のトウモロコシを熟す前にもいで市場にたくさん売ったそうだ。

――加工した農民個人の生産物については、当局は取り締まらないのですか?
農民たちは、取り締まりに引っかからないように、(庭などで)個人で生産したものだということを農村管理委員会や、(警察の)分駐所に報告する。早く動いた人は少しお金を作れたけれど、分駐所が承認をしてくれず、売ろうとしても売れなかった家もある。

遠くまで見渡せるようにだろう、分かれ道に3~4メールほどの高さの監視哨所が立つ。若い男女は近隣から収穫支援に動員された高級中学の生徒と見られる。服こざっぱりした服装だ

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