10.11
<北朝鮮内部>農場現地からの最新報告(1) 収穫は昨年より好転も不作か 深刻な営農資材不足で限界 (最新写真4枚)
金正恩政権による今年の農業への力の入れ方は尋常でなかった。労働党中央委員会の各種会議では、農業問題を繰り返し最優先課題として取り上げ、春先から国民総動員体制で食糧増産に注力していた。今、全国の協同農場で収穫が始まっている。アジアプレスでは9月後半に咸鏡北道(ハムギョンプクド)の協同農場を取材協力者が訪れ現地調査。同時期に中国人の協力者が鴨緑江沿いで収穫期の平安北道(ピョンアンプクド)の農場の様子を撮影した。農業の現況の一端をシリーズで報告する。(カン・ジウォン/石丸次郎)
◆金正恩政権は増産の大号令
「農業を立派に営むのはこんにち、朝鮮革命の最重大任務、最優先課題であり、その成果いかんは全的に党組織と党員の役割にかかっている」
3月21日の労働新聞は社説でこう書いた。ちょうど営農作業が始まる頃であり、労働党組織をあげて増産に取り組むようはっぱをかけたわけだ。
職場や学校、大衆団体から夥しい数の人員が農村に動員されるのは毎年のことであるが、今年は異例にも、軍部隊まで農場に派遣されて、水路の補修や実際の農作業に従事した。多くの農場に1中隊100人程度が駐屯した。
我われが今回現地調査したB協同農場は農場員数約500人。主に主食のトウモロコシを栽培している。咸鏡北道では平均より若干小規だが、山がちで水田の少ない北部地域の典型的な農場だと言っていいだろう。
写真撮影は、中国人の取材協力者が9月後半に行った。国境の川・鴨緑の沿いを遊覧船に乗って北朝鮮の平安北道の朔州(サクジュ)郡に接近して撮影した。ちょうどトウモロコシの収穫のただ中であった。
私たちの調査は北部地域のごく一部の農場に過ぎず、南西部の穀倉地帯の黄海道(ファンヘド)をはじめ、他地域の状況は把握できていない。また米作についても調査ができなかった。だが、協同農場が抱える共通の課題や、今年のトウモロコシ収穫の方法について、一定の傾向を知ることができるだろう。
◆天候良好で若干の収穫増も資材不足は深刻
以下は、現地調査したA氏との一問一答である。訪問時、B農場はトウモロコシを収穫している最中だった。
――B農場のトウモロコシの作況はどうでしたか?
収穫量は去年より若干良かったようだ。調査したある分組は、収穫高が1町歩(約1ヘクタール)当たり4.6トン程度で、昨年の4.3トンより少し上がった。ただ、未熟だったり盗まれて流失したりした分もあり、実際の収穫量の判定や農場員への分配量については、最終結果が出ないと分からないそうだ。
※北朝鮮で正常なトウモロコシ収穫量は1町歩当たり6~7トン程度とされるので、B農場の今年の作況は決して良好とはいえず不作である。
※分組とは集団で農作業をする最小単位のことだ。現在は10数人程度で構成される。
――今年は大きな洪水や干害はなかったようです。
本来なら、今年はもっと生産が上がったはずだった。やはり営農資材の不足の影響が大きかったそうだ。足りずに支障があった物資は、1ビニール薄膜、2肥料、3輪転機材の付属品(トラクターなどの車両の装備や部品)、4燃油の順だと農場員らが言っていた。農民らの消費物資の不足も深刻だ。履ける靴がまともにないため、新義州靴工場で生産したゴム靴を臨時に供給して、夏の間はそれを履いて作業したそうだ。
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