2023
09.28

とうとう始まった!!毎日が国際交流で二日酔い「NO LIMIT 2023 高円寺番外地」

国際ニュースまとめ

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とうとう「祭り」が始まった。 

前回の原稿で告知した、「NO LIMIT 2023 高円寺番外地」。

この原稿を書いている時点で4日目。22日から本気で遊びまくり、連日いろんな国の人と交流して飲みまくっている。世界平和のためにだ。

ということで、国同士が対立を煽っても、民間人で仲良くなりまくろうということで数年ぶりに開催された「NO LIMIT」という祭り。10日間で高円寺を中心に50ほどのイベントが開催される。

前回は韓国や台湾、中国、香港などから200人ほどが訪れたわけだが、今回もそれらの国から大挙して人が押し寄せている。

特に多いのが中国から来た人々だ。しかも圧倒的に20代が多い。

例えば初日、この祭りの首謀者である松本哉氏のトークイベントが開催されたのだが、それは最近中国に行った顛末。その中でも公開できる話は今出てる「週刊金曜日」に詳しいのだが、面白いのは到底公開できない話。

中国ではさまざまな政治的、文化的活動をしている人がいるが、当然、日本よりも取り締まりは厳しい。それに対して、どのような「裏技」が発明され、使われているのか。その内容は、書いてしまったらそれをやってる人が危険に晒されるので書けないのだが、国との「トンチ合戦」のようなやり方に会場は何度も爆笑に包まれたのだった。

書ける程度のことだと、スマホに写真などの証拠を残さないことが重要で、何かやるにしてもSNSに書くなんてもってのほか。そのためか、中国ではZINE(冊子的なもの)が流行っているらしく、「ネットから紙媒体へ」の先祖返りが起こっているという。それだけではない。さらに上を行くやり方に「版画」がある。

「SNSなんてもう古い。今一番新しい情報伝達手段は、版画!」と言ったのは20代の中国の女の子。版画がこうして脚光を浴びる日がくるなんて、一体誰が想像しただろう? ちなみに「NO LIMIT 2023 高円寺番外地」期間中には、中国の人々による版画のワークショップも開催される。

このように、まったく違う境遇で活動する人々のノウハウを聞くと多くの発見がある。そして不思議と共通点も多い。もっとも共通しているのは、「NO LIMIT」に集まる外国人たちは、それぞれの国でいろんな活動をしている人が多いものの、真面目な活動家はほぼいないということだ。どちらかというと不真面目で、真面目な活動家に怒られるタイプ。これは松本氏ら素人の乱界隈とまったく同じ特徴で、真面目な人がいないからこそ面倒なルールなんか作らず好き勝手にやっている。それでもなんとなく回るところがいい。

さて、海外のノウハウということで言えば、思い出すのは逃亡犯条例に反対する巨大デモが起きていた時の香港だ。その時、現地には松本氏も駆けつけたわけだが、そこでも多くのノウハウが生み出されていた。例えばその一つが、ステートメントや作戦などの共有は、その場でスマホのエアドロップを使ってするということ。そのやり方であれば、誰が中心かわからない。こういうノウハウが様々な「抵抗の現場」で日々生み出されているのだ。

2日目は、夕方から西荻窪でデモ。そのあとに西荻窪「三人灯」という店で宴会だ。日本人、香港人、中国人、イギリス人、ドイツ人などなど入り乱れて大交流。飲みすぎてあまり記憶がないまま3日目に突入。

この日は18時から高円寺のSUB STOREで「中国寝そべり主義と怠け者の家」に出演。2020年頃、中国では競争に疲れた人々の間で「最低限しか働かない」寝そべりが大ブームとなり、「寝そべり族」と呼ばれて大きな注目を集めた。21年には作者不明の「寝そべり主義者宣言」という文書が中国各地でばらまかれはじめ、22年、松本氏らがそれを翻訳して日本で売り出すと、一般流通はまったくしていないのにすでに2000部以上を売り上げている。そんな中国の「寝そべり主義」について、上海で「怠け者の家」というスペースを運営している女性・羅渣さん(29歳)を迎えて私と松本氏と3人でトーク。

会場には立錐の余地もないほどの人が押し寄せ、大盛況だったのだが、始まる前に重大なことが発覚した。私と松本氏は日本語、羅渣さんは中国語なのに通訳を用意していなかったのだ。しかも会場には中国語しかわからない人も多くいる。

ということで、急遽松本氏が「酒5杯で通訳やってくれる人!」と募ると一瞬で見つかり、事なきを得る。

そうして始まったイベントでは、最近、「寝そべり主義者宣言」を書いた謎の人物に話をきいてきてくれた羅渣さんが「寝そべり」について解説。お金持ちや中産階級の中にも自らを「寝そべり」と自称する人がいるけれど、寝そべりはあくまでもメインストリームへの対抗、競争に反対する姿勢であること、貧乏人が寝そべることこそがもっともラディカルであることなどなどを話してくれた。

「中国寝そべり主義と怠け者の家」のイベントにて、左から私、上海の羅渣さん、松本哉さん「中国寝そべり主義と怠け者の家」のイベントにて、左から私、上海の羅渣さん、松本哉さん

そんな羅渣さんは上海で、「広い意味での寝そべり」としての「怠け者の家」を運営。

がむしゃらに働くよりのんびりすることを提唱し、21年から始めたそうだ。そこに何人かで住みながら、演劇やアートの展示会、「家庭映画祭」などを開催。また、上海がロックダウンされ外出できなくなった時は、自宅から配信するなどした。

それにしても、長く経済的停滞が続く日本と違い、今の中国であれば頑張ったらお金持ちになれそうな気もするのに、若者の間にこれほど「寝そべり」が流行るのはどういうことなのだろう?

そう思って聞いてみると、中国も衰退に入っており、どんなに頑張っても上の階級には行けないことがみんなわかっているのだという。大学を出ても仕事がないなど、若者の間に諦めが蔓延しているというのだ。この辺り、日本や韓国が辿ったのと同じ道だろう。

ちなみに5月、私の『非正規・単身・アラフォー女性』が中国で出版されたのだが、その背景には、このような状況があるわけだ。

さて、イベント後は「NO LIMIT 2023 高円寺番外地」に参加している店をはしごして中国の女子たちとひたすら飲み、語り合ったのだが、嬉しかったのは、私の『非正規・単身・アラフォー女性』を中国ですでに買ってくれていた女子がいたこと。しかも彼女によると「売れている」そうで、どうやら中国の上野千鶴子ブームの中、大手出版社が「日本のフェミシリーズ」のようなものを出しており、その中の一冊だったらしい。それを聞いて、俄然色めき立った。なぜなら、海外出版には、「印税ほんとにもらえるの?」という不安が常につきまとうものだからである。それが大手出版社なのであれば確実な振込が期待できるではないか。しかも日本と違い、人口が多いので初版部数が多い。そう、中国出版、著者にとっては非常に「おいしい」話なのである。印税が無事入ればだが。

一方、松本氏の本は『貧乏人の逆襲!』が韓国でベストセラーとなっているが、中国での出版は難航しているようだ。完全に危険人物とみなされているようである。が、中国の人たちに聞くと、松本氏の文章は海賊版のような形で中国語に訳され、すでに中国で有名人だというのである。だからこそ、こうしてわざわざ中国から高円寺にやってくる中国人がいるわけだ。

この日は深夜まで「なんとかバー」で飲み、最後の方はほとんど記憶がないのだが、16年の「NO LIMIT東京自治区」から7年ぶりの日本での開催でいろいろな発見があった。

特に突きつけられたのは、日本が貧しくなったこと。あちこちで、「7年前と違って、アジアから来る人たちの方が経済的に余裕がある」といった会話が普通に交わされている。確かに、アジアから来た人たちはオシャレで、そして多くが20代、30代で、会話のはしばしから豊かさが伝わってくる。彼らが自国で運営するスペースの家賃は日本よりも高いことが多く、また、円安なので、日本の安さに感激する声も聞く。

ああ、先進国で唯一、30年賃金が上がらない国ってこういうことなんだな……と思わず遠い目になりそうだ。

そんな「NO LIMIT 2023 高円寺番外地」は10月1日まで続くが、初日の試みが良かった。夜は毎日なんとかバーで「韓国バー」や「台湾バー」「沖縄バー」なんかが開催されるのだが、初日は「Yamagata tweakster支援バー」。

Yamagata tweaksterとは、16年の「NO LIMIT東京自治区」、その翌年の「NO LIMITソウル自治区」で大活躍した韓国のミュージシャンなのだが、最近、交通事故で大怪我を負ってしまったのだ。その治療費集めカンパバー。売り上げはYamagata tweaksterにカンパされるという仕組みだ。

なんとかバーではこのような「助け合い」が根付き、最近では光熱費が払えない友人のための「光熱費捻出バー」が開催され、コロナ禍初期、中国・武漢での感染が大変だった時には、武漢の友人たち(もともと武漢のバンドとこの界隈の人は仲がいい)のために「武漢支援バー」が開催されている。

私はこのような「助け合い」が、貯金したり、民間の保険に入ったりするよりもずっとセーフティネットになりえると思う。そういえば韓国の人の家が爆発した時にも支援バーが開催された。国境を越えて助け合うコミュニティ。そんなものがあればちょっとくらい仕事がなくてもお金がなくてもなんとかなる上、このような民間のつながりは、いざという時に争いを止める力になりえると確信している。

ということで、世界平和のために10日間、アジア人たちと遊び続ける所存である。

中国で翻訳された本と、羅渣さんと中国で翻訳された本と、羅渣さんと

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Source: HuffPost