2023
09.16

世界で山火事が拡大、地球温暖化との関係は?人間活動の影響も

国際ニュースまとめ

カナダ・ブリティッシュコロンビア州の山火事=8月18日カナダ・ブリティッシュコロンビア州の山火事=8月18日

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今年のカナダの山火事は過去の記録を大幅に上回る焼失面積となっています。6月にはカナダ東部の山火事の影響でニューヨークでは空が不気味なオレンジ色になりました。

8月にはハワイ・マウイ島で100人以上が亡くなるなど、世界で山火事が多発しています。

なぜ世界で山火事が拡大しているのか。専門家に聞いた話も交えて考察します。

カナダの山火事による煙で視界が悪くなっているNYの様子=6月7日カナダの山火事による煙で視界が悪くなっているNYの様子=6月7日

山火事拡大の一因には「人間の影響」も

日本における山火事の多くは、人間の不注意によるものですが、山火事は自然に起こるものでもあります。

例えばアメリカやオーストラリアなど乾燥した地域では、干ばつが強くなると「雨をともなわない雷」や「落ち葉同士の摩擦熱」などの自然発火によって山火事が起こります。

もともと自然の出来事でもある山火事には、“良い点”もあります。生態系システムにおいては、森林の健康を保ち、新たな植物の生育を促し、生物のすみかを確保する側面もあります。山火事が一定程度発生することは自然なことなのです。

しかしながら、山火事は人間にとっては脅威となるため、北米では早いところで20世紀初頭から「森林火災抑制プログラム」が実施されてきました。

米カリフォルニア州ミッドパインズ付近の森林火災(アメリカ・ミッドパインズ)=2022年7月米カリフォルニア州ミッドパインズ付近の森林火災(アメリカ・ミッドパインズ)=2022年7月

人間不在の自然状態でも一定程度起こる山火事ですので、人間の影響で山火事が少なくなった場合、「自然状態であれば燃えるはずのもの」が燃えずに残っていることになります。

「森林火災抑制プログラム」などの影響で一時は山火事が減るかもしれませんが、その間にも山中に「燃料」が蓄積され続けていきます。

そのような燃料だらけの所に、何らかの火種があり、ひとたび火災が燃え広がりやすい気象条件が揃うと、爆発的に火災が燃え広がる…そんなことが現在起こっているのです。

乾燥や高温が影響…背景に温暖化も

山火事拡大の背景には、上記のような人的要因以外に、気象条件としての「乾燥」や「猛暑」、「強風」ももちろん影響します。

今年は、エルニーニョ現象の影響もあって、全世界的に高温となっていますが、山火事の原因としては「乾燥(干ばつ)」の影響が特に大きいとされています。

世界の月ごとの異常気象(2023年7月)世界の月ごとの異常気象(2023年7月)

干ばつの極端化や増加には、人為起源による地球温暖化も影響しています。

水資源の豊富な日本に住んでいると実感しづらい干ばつですが、日本で大雨が激化しているように、干ばつが極端になっている地域もあります。カリフォルニアなど北米西部では、地球温暖化によって、現時点ですでに干ばつが増えています。(IPCC第六次報告書第一作業部会AR6 WG1 図SPM.3 パネル(c)

雪がない期間が増えたことも一因か

今年はカナダの山火事面積が過去最大となりました。この一因として、干ばつを基本として、高温、さらには「冬の少雪」も影響したと言われています。

IPCCの報告書にも、人間の影響は、1950 年以降の北半球における春の積雪面積の減少に寄与した可能性が非常に高いと書かれています。(IPCC第六次報告書第一作業部会SPM A.1.5

北米西部の山岳域では、積雪減少と融雪時期の早まりにより山火事シーズンが長くなりつつあります。

イメージ画像イメージ画像

「人の活動圏」の拡大が山火事の増加の一因にも…

2014年の広島土砂災害では、77人の方が亡くなりました(令和5年版防災白書附属資料1)。

その背景として考えておくべきなのが、高度経済成長期の1960~70年代に、土砂災害の危険のある山際の土地まで住宅地開発がなされていたということです。

山火事についても、一部の地域では、似たようなことが起こっているようです。
東京大学の森章教授によると、一部の地域では、住宅地のための土地開発などにより人の活動圏が内陸部や山間部に拡大しており、送電線からの漏電や焚火など人為要因の発火も生じやすくなっています。

サンフランシスコ周辺などは地価が高すぎて、価格の安い内陸部(すなわち乾燥した森林やサバンナ帯)への住宅地開発が続いている、と森教授は話しています。

人の活動圏の拡大が山火事の拡大を招くと同時に山火事の大きな要因の一つの「干ばつ」の増加や激化の背景には人為起源の地球温暖化があります。

とはいえ、私たちの生活を大昔に戻すことは難しいのが現状です。自然と共生しながらも人間が快適に暮らしていける世界を実現するためには、まずは、私たち1人1人がそのような未来を志向し、自分に何ができるのかを考え、実行していくことが大切だと思います。

<参考文献>
森章研究室 http://akkym.net/about/fires/

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Source: HuffPost