2023
07.27

「汚染水がそのまま海に…」イラストが拡散⇒「誤り」中国系ウェブサイトが投稿元か

国際ニュースまとめ

合わせて読みたい>>「IAEAは中立か」東京新聞の処理水めぐる報道、元国連広報官は「結論ありき的な記事」と指摘

東京電力福島第一原発の「処理水」の海洋放出方針をめぐり、汚染水がそのまま海に放出されるかのようなイラストがSNS上で拡散している。

しかし、海洋放出方針が示されているのは、「多核種除去設備(ALPS)」などに通して放射性物質を取り除いた「処理水」であるため、イラストは誤りだ。

また、イラストの投稿元をたどると、中国系のウェブサイトに行き着いた。

ハフポスト日本版はファクトチェックした。

拡散しているイラストは?

「わかりやすいイラスト これ海に流すのです 日本政府」

匿名アカウントは7月26日、「X」(Twitter)にこんな文章を投稿した。

投稿には、福島第一原発で発生した汚染水がそのまま海に放出されるかのようなイラストが添付されていた。

投稿は27日正午現在、2200リツイート、3300いいねと拡散している。

しかし、このイラストは誤りだ。

誤ったことが書いてあるイラスト誤ったことが書いてあるイラスト

イラストは誤り

経済産業省復興庁のサイトによると、福島第一原発では、原子炉建屋に雨水や地下水が流入するなどして、放射性物質を含む汚染水が発生している。

それを「多核種除去設備(ALPS)」に通すなどし、放射性物質を取り除く処理をかける。

これが、海洋放出方針が示されている「処理水」だ。処理されていない汚染水がそのまま海に放出されることはなく、イラストは誤りとなる。

なお、処理水には、ALPSでの除去が困難な水素の仲間「トリチウム」が含まれているが、この物質は自然界や水道水、人間の体内にも存在する。

トリチウムが出す放射線のエネルギーは紙1枚で防げるほど弱く、この物質は日本を含む世界各国の原発施設から海洋放出されてきた。

さらに、福島第一原発から処理水を海洋放出する際のトリチウム濃度は、1リットル当たり1500ベクレル未満とする。

国の基準の40分の1、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の約7分の1の値だ。

IAEAも7月4日、処理水の海洋放出を「人や環境に与える放射線の影響は無視できる」「国際的な安全基準に合致する」とする包括報告書を公表している。

トリチウムの年間処分量(国内外の例)トリチウムの年間処分量(国内外の例)

投稿元のドメインは中国の「.cn」

では、このイラストの投稿元はどこか。

ハフポスト日本版が画像検索で調べたところ、「中国の政治、文化を理解するための情報発信ブログサイト」と書かれたウェブサイトに行き着いた。

ウェブサイトのドメインは、中国に割り当てられている「.cn」。イラストは2021年12月2日付の「今日の中国語」というページに表示された。

X(Twitter)でイラストを発信した匿名アカウントが、どこからイラストを引用してきたのかは定かではないが、少なくとも2021年の段階で中国系ウェブサイトが同様のイラストを発信していたことになる。

悪意ある偽情報の拡散には必要な対策をとる

中国はこれまで、処理水を汚染水と表現し、海洋放出方針を「身勝手で傲慢」などと批判してきた。

一方、7月13日に開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)と日中韓3か国の外相会議では、汚染水という表現を使う中国に対し、日本の林芳正外相が「科学的根拠に基づかない主張」と反論する場面もあった

日本の外務省は、インターネット上で誤った情報が広がっていることを受け、処理水の安全性を説明する英語版の動画を公開

林外相は7月21日の閣議後記者会見で、放出への反発を強める中国を念頭に、「悪意ある偽情報の拡散に対しては必要な対策をとる」と述べている

◼️ファクトチェック記事のレーティングについて

ハフポスト日本版では、NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。

また、これまでハフポスト日本版が実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。

…クリックして全文を読む

Source: HuffPost