2023
07.14

「難民申請中も日本政府から毎年192万円もらってる」 ⇒ 不正確。難民政策めぐりTwitterで拡散

国際ニュースまとめ

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「難民申請中の外国人は、日本政府から毎年192万円をもらっている」という趣旨の投稿がSNSで拡散している。

だが、この投稿は「不正確」だ。

国の委託事業の一環で難民認定申請者に対する生活支援はあるものの、「保護費」を受給できる対象者は難民申請中の全ての人に当てはまるわけではない。受給期間も限られ、必ずしも毎年受け取れるものではない。

ハフポスト日本版がファクトチェックした。

経緯を振り返る

拡散されている投稿が引用しているのは、<「当たり前のものが私たちにはない」在日クルド人が国会で涙ながらに訴えた日本の難民政策の現実>という見出しの東京新聞の5月26日の記事だ。

子ども時代に両親と来日し、成人後に在留特別許可を受けたクルド人当事者が、入管難民法改正案に関する参考人として参議院法務委員会に出席した時の発言などを報じる内容だった。

ツイートでは、記事のタイトル部分と参考人の顔写真を切り取った上で、

「難民申請中も日本政府から 

生活費 1日1500円×365日 

住居費 毎月4万円×12ヶ月

 働かずに毎年192万円もらってるのに?」

とつづっていた。

難民申請中の人に対する生活支援に関して、拡散されているツイート難民申請中の人に対する生活支援に関して、拡散されているツイート

この投稿は7月11日午後にツイートされた。14日午後6時時点でリツイート数は5700件を超え、1万2000件の「いいね」がついている。

支援対象者には条件がある

国は委託事業で、難民認定申請者に対する生活支援を実際に行っている。

公益財団法人「アジア福祉教育財団」のホームページによると、同財団が設置する難民事業本部は、外務省・文化庁・厚生労働省から委託を受け、難民が日本で自立定住していくための支援を行う。活動の一つに、難民認定申請者への支援事業がある。

難民認定申請者のうち、難民事業本部の調査によって「日本において生活困窮の度合いが高く衣食住に欠ける等、保護が必要と認められる人」に対し、生活費・住宅費・医療費を合わせた「保護費」を支給している。

外務省人権人道課によると、申請者への保護費の支給は、生活に困窮する難民認定申請者らを支援することが目的。同財団が一括して事業を担っている。

支給の対象者は、

・1回目の難民認定申請か、または難民認定申請に係る審査請求をしている

・2回目以上の申請者の場合、裁判所で「不認定処分」などの取り消しを求めて訴訟を行っている(一審)

という条件がある。

さらに「資産や収入のある方、働くことができる方、本人を扶養すべく、かつその能力を有する親族を有している方、公的扶助等を受給している方、その他保護措置を実施することが不適当と判断される方」は、支援を受けられない場合があるとも説明している。

つまり、難民認定申請者であれば一律に保護費を受け取ることができる、というわけではない。

保護費の内訳は

次に、支給額を見ていく。

保護費の内訳は、生活費・住宅費・医療費の合計だ。

同財団の公表資料によると、「生活費」は12歳以上は日額1600円、12歳未満は日額1200円。

「住宅費」の支給額には上限があり、「家賃や居住人数により異なる」としている。

「医療費」は、原則として保険適用内の治療の実費分を支給するといい、高額が見込まれるなどの場合は支給されないこともあるという。

これらの保護費の支給期間は、「原則4か月間」と説明している。これを踏まえて生活費を算出すると、「日額1600円×4か月分(120日)」で19万2000円となる。

一方、同財団や外務省によると、支給決定後も生活状況の審査があり、受給者の生活が改善しない場合は期間が延長されるという。

家賃はケースによって変動するため推計が困難だが、少なくとも冒頭の投稿で言及している「生活費 1日1500円×365日」という計算式は不正確であることが分かる。

そして前述のように、保護費には支給条件があり、対象となる人は限られる。

よって、全ての難民申請者が年192万円の支給を受けているかのような印象を与えるツイートは、不正確だ。

不用意な拡散には、注意が必要だ。

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  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
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Source: HuffPost