06.22
これ実は、魚じゃありません。マグロやフィッシュカツ、明太子まで…。最新代替シーフードを食べてみた
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いつの日か、食卓から魚が消えてしまうかもーー。
魚屋やスーパーに行けば豊富な魚介類がたくさん売られており、多くの人はそんな懸念を抱いたことはないかもしれない。
でも、危機は迫っている。
実際に日本では、天然物の漁獲量が40年前と比べておよそ3分の1まで減少しており、産業を一刻も早く持続可能にすることが求められている。
現在、海の豊かさを守るために様々な取り組みが行われているが、そのうちの一つが、主に植物性の原料から作られた「代替シーフード」だ。
日本では、魚のすり身でカニの食感を再現した「カニカマ」などが人気を集めているが、これとは異なり、基本的に大豆たんぱくなど植物をベースにしている。
まだあまり目にしないが、これから「代替肉」のように市場に広がり、新たなトレンドになると期待されている。
アメリカの調査会社Allied Market Researchによると、世界のプラントベース・シーフード市場は2021年には4200万ドル(約58億円)だったが、2031年までには13億ドル(約1800億円)まで成長すると予測している。これは42.3%の年平均成長率だ。
日本では、2021年に代替肉で有名なネクストミーツが100%植物性で大豆を主原料とした「NEXTツナ」を発売。あづまフーズからも見た目が本物の刺身そっくりな代替サーモン、マグロ、イカが販売されている。
オイシックス・ラ・大地が6月に開催した最新プラントベースシーフード試食会では、アメリカですでにレストランでも利用されているというプラントベース・マグロや、おからやこんにゃくを原料に作られたフィッシュカツなどが紹介された。
枯渇に向かいつつある水産資源を考えるとグッドニュースに聞こえるが、美味しいのだろうか? 実際に試食してみた。
【代替マグロ丼】
この代替マグロは、アメリカの新鋭プラントベースシーフード会社でオイシックス・ラ・大地の投資子会社Future Food Fundの投資先である、Impact Food Inc.が開発したもの。
昨年のこの試食会で発表された時点ではまだ開発途中だったが、現在はすでにアメリカ・サンフランシスコのレストランで「マグロ丼」と「おにぎり」として、従来のマグロ製品と同価格で販売されているという。
食感はというと、昨年の試作品は本物のマグロに比べ歯切れが良すぎたのに比べ、今回のものは食感に少し弾力が加わり、実物により近くなっていると感じた。マグロ丼としてきゅうりとアボカドと共に食べるとそれぞれの食感の違いがより際立つ。
味は、既にタレで味付けされていたので判断しにくいが、他の食材と共に「マグロ丼」として食べるには全く違和感がなく、代替品と言われなければ分からないかもしれない。
Impact Food CEOのケリー・パンさんは、今のアメリカの代替フード市場は、シーフードに限らず「日々の食生活に取り入れられる、おいしく栄養価が高い、リアルな代替品を求めている」と話し、「クリーンで原材料が少なく、それでいてヘルシーでリアルな代替品であることが重要」だと述べる。
実際に、同製品は、植物性由来のタンパク質や藻類、野菜ジュースなどからできており、「たんぱく質やオメガ3脂肪酸が摂取でき、コレステロールゼロ、トランス脂肪酸ゼロ、砂糖ゼロ」だという。
現在はまだサンフランシスコ周辺にある一部レストランのみでの取り扱いだが、早ければ今年の末までに日本に進出する可能性もあるという。
【代替フィッシュカツ】
こちらのフィッシュかつは、日本のディーツフードプランニング株式会社が開発した、日本の伝統的な食材こんにゃくとおからを組み合わせたおからこんにゃく「ディーツ」を使った商品。おからは大豆から豆乳を絞った残りかすだが、古くから食卓で親しまれてきた。商品目的によってはおからを使わない場合もあるという。
独自技術によりおからなどの特有の匂いを消すことができるため、様々な食材にアップサイクル(使い道のないものに手を加え価値を与える)することができる。
この代替フィッシュカツバーガーでは、フィッシュカツだけでなくマヨネーズも同社が開発したもので、卵不使用だという。
フィッシュカツは食感も味も本物によく似ていて美味しく、実際に揚げてあるというだけあり満足感も十分。エッグフリーマヨネーズとの相性も抜群だ。
独自技術による商品のため、あまり詳細は開示できないとのことだが、こんにゃくとおからが主原料で、動物性原料は一切使用せず、主菜で食物繊維を摂取できるという。
このフィッシュカツはまだ業務用としてしか販売されていないが、一般市場向けには、ミンチやボールタイプなどのディーツ商品が複数売られている。
【代替めんたいこ】
こちらの代替めんたいこもディーツフードプランニングが開発したものだ。おからはなく、こんにゃくがベースだ。動物性原料は一切使わず、プリン体も脂質もゼロ。プロトタイプを業務用に販売し始めた段階で、まだ市販されていない。
味はもはや明太子そのもの。食感としては、独特の粒々感はあまり感じなかったものの、おにぎりの具としては十分の味わいだ。
上記の代替フィッシュカツとめんたいこは、原料にこんにゃくやおからを使っているだけあり、美味しいながらもカロリーが抑えられ、肉やシーフードではなかなか取れない食物繊維が取れるのも嬉しい。
実際に以前は「ディーツ」はダイエット食品として人気だったというのも納得だ。
今後は販路を広げ、一般販売の可能性もあるという。
独自技術による商品のためあまり詳細は開示できないとのことだが、個人的にはタンパク質量や添加物などの情報が欲しいところだ。
同社では、現在プラントベースウナギも開発最終段階にあるという。
ディーツはこれまで、高級ホテルや飛行機ビジネスクラスの機内食、人気レストランでも利用されおり、その取り入れやすさや可能性は無限大だ。
海の豊かさを守るために
残念ながら現時点ではまだ、代替シーフードは身近に手に入る存在ではない。
では、消費者である私たちは今、海の豊かさを守るために何ができるのか。
普段食べている物の背景で何が起きているのかを知ること。
そして、水産資源と環境に配慮した持続可能な漁業で獲られた水産物(MSC)や、環境や生態系、人権に配慮した養殖水産物(ASC)につけられる国際的な認証ラベルの付いた魚を選ぶこと。
いずれも、ちょっとした努力だ。しかし、実践する人の数が増えれば、大きな違いを生み出すことになる。
そうして海の豊かさに対する私たち市民の意識や需要が高まれば、近所のスーパーで代替シーフードの選択肢が増える日が来るのも、そして実際に海が豊かさを次第に取り戻す日が来るのも、遠くはないだろう。
Source: HuffPost