06.06
「かわいい」「恋人とどこまで…」5人に1人が“採用面接”で不適切な質問を経験。裏アカ調査の実態も【就職差別】
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「メガネとったほうがかわいいよ」「恋人とどこまで進んだ?」
就職活動中に不適切な質問や発言をされた人が5人に1人の割合に上ったことが、日本労働組合総連合会(連合)の調査でわかった。
特に、面接で性別や性的指向、性自認への違和感を聞かれた人は前回調査より増えており、採用基準などで男女差別を感じた人も30%超となった。
企業による「SNS裏アカ調査」の実態も調べた今回の調査。
専門家は「令和にこのような質問がまかり通っていることに怒りすら感じる」とコメントしている。
面接で「性別」や「恋人の有無」の質問も
連合の調査は、5月31日に公表された「就職差別に関する調査結果2023」。
2019年以来2回目の調査で、4月1〜4日にインターネット上で実施した。
最近3年以内に就職採用試験(新卒、中途)を受けた全国の15〜29歳の男女1000人から有効回答があった。
回答者の内訳は、男性491人、女性498人、その他11人。最終学歴は、中学校31人、高校214人、短大161人、4年制大学・大学院588人、その他6人。
まず、「応募書類やエントリーシートで記入を求められたことがある」については、「性別」が80.5%で突出して高くなった。
「本籍地や出生地に関すること」(43.6%)、「家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)」(37.2%)と続き、「宗教に関すること」(9.0%)など、個人の思想を推し量りうることを聞かれた人もいた。
「面接で質問されたことがあるもの」は、「転勤ができるかどうか」(43.3%)、「残業や休日出勤ができるかどうか」(42.8%)が特に割合が高かった。
一方、「婚姻状況(未婚・既婚)」(27.1%)、「恋人の有無」(14.7%)、など、応募者の適性や能力に関係ない質問も多かった。
なお、「性別」28.6%(前回調査18.9%)、「性的指向の確認」8.9%(同3.1%)、「性自認への違和感の有無」7.6%(同3.3%)は、いずれも前回調査の割合を上回っている。
「メガネをとったほうがかわいい」「恋人はいた?」
「面接で不適切だと思う質問や発言をされた」と回答した人は、全体の19.5%だった。
性別で見ると、女性(20.5%)が男性(18.3%)よりも多く、面接の場で女性の方が不適切な質問や発言を受けることが多いことを示している。
女性の回答者が受けた不適切な発言には、以下のようなものがある。
- 「女性だからどうせ辞める」
- 「女のくせに」
- 「女だから大変だろう」
- 「転勤先でも出会いはあるよ」
- 「メガネをとったほうがかわいいよ」
- 「マスクをとったほうがいいね」
- 「かわいいね」
- 結婚観
- 彼氏の有無
- 結婚や妊娠をしても仕事を続けるか
- 入籍日や別居理由
- 結婚や子どもの予定
- 体型
- 家が裕福かどうか
- 性的指向に関して一方的な決めつけ
男性は次の通り。
- 「女性のほうが仕事が丁寧だから」
- 「男性だから……」
- 「女っぽい」
- 恋人の有無
- 結婚観
- 恋人がいたかどうか、どこまで進んだか
- 親の年齢
- 家族の職業
- 親の会社
- 母子家庭であることについて
- 犯罪歴
- 好きな芸能人。回答したら否定的なことを言われた
- 人種
不適切だと思う質問・発言をされた195人に、業種を聞いたところ、「医療、福祉」(14.9%)が最も多く、「サービス業」(13.8%)、「建設業」(13.3%)、「情報通信業」(10.3%)と続いた。
「男女差別を感じた」は30%超に
さらに、就職活動中に「男女差別を感じたことがある」と回答した人は、32.8%(328人)に上った。
具体的には、「男女で採用職種が異なっていた(男性は総合職・女性は一般職など)」が39.6%と最も高く、「採用予定人数が男女で異なっていた」(36.9%)、「男性のみ、または女性のみの募集だった」(30.8%)、「男女で制限条件が異なっていた(婚姻の有無や自宅通勤者限定など)」(22.0%)と続いた。
男女雇用機会均等法では、労働者の募集・採用に関し、性別を理由とする差別は禁止されている。
企業による「SNS裏アカ調査」も
また、企業が応募者の匿名アカウントを調べる「SNS裏アカ調査」の実態も露わになった。
回答者1,000人に「企業から『SNS アカウントを調査する』といった通知を受けたことがあるか」と質問したところ、「ある」は 11.7%、「ない」は 63.3%、「わからない」は 25.0%となった。
「企業から SNS アカウントを調査されたことがあるか」については、「ある」は 10.7%、「ない」は 60.0%、「わからない」は 29.3%だった。
身元調査になりうるため、「新たな就職差別」につながる恐れもあるが、「わからない」の回答者が25~30%ほどいることから、この数字以上に裏アカ調査が行われている可能性もある。
企業の採用活動は人権に関する意識が希薄
今回の「就職差別に関する調査2023」では、千葉商科大学国際教養学部・常見陽平准教授が次のように解説・講評を寄せている。
「これで日本企業は Z 世代を採用できるのか?。調査結果をみて、心配になってしまった。1990 年代後半以降に生まれた Z 世代の特徴は、人権や環境などの問題について関心が高いことで ある。しかし、今回の調査結果をみると、日本企業の採用活動は人権に関する意識がまだまだ希薄であると言わざるを得ない」
「採用面接に関しては、前回の調査に比べて一部改悪が目立った。「性別」に関しては 28.6%と前回(18.9%)よりも 10 ポイント近く増えており、令和のこの時代にこのような質問がまかり通っていることに怒りすら感じる。性的指向や性自認に関する質問をされた求職者も、それぞれ約 10%いた。言語道断である」
「人権に無頓着な企業に採用氷河期は乗り越えられない。未来を創るために、Z 世代から選ばれるために、企業も変わらなくてはならない」
Source: HuffPost