2021
07.16

感染拡大のインドネシアは第2のインドの様相 医療システム限界、続々と倒れる医師たち

国際ニュースまとめ

<状況が落ち着いていたインドネシアは、宗教上の祝祭を契機に感染爆発へ転化。酸素不足に医療関係者の感染にと、最悪期のインドに近い様相を呈しはじめた> 非常に強い感染力を持ったデルタ型コロナウイルスが猛威を振るうインドネシアで、医療システムが限界に達しつつある。現地の新型コロナ・タスクフォースは、13日の新規感染者数が4万7899人に達したと発表した。直近10日間において過去最悪の記録を更新するのは、これで6回目となる。 同日の死者は864人となり、人口あたりの日本の7日間移動平均と比較して約30倍という高水準になっている。また、インド全土の7日間平均を抜いた。 インドネシアの感染状況は年初のピーク以降落ち着きを見せていたものの、イスラム教の断食明けを祝う5月の祝祭で油断が広がった。6月以降は感染者数が指数関数的な増加を見せており、病床、医療スタッフ、医療用酸素の供給がいずれも不足している。世界最悪の状況ともいわれたインドでは、春の宗教行事「クンブメーラ」で深刻な感染第2波を招いたが、これと似た傾向だ。 インドネシア中心部のジャワ島では、人々が酸素の供給を求めて空の酸素シリンダーを携え、製造工場に詰めかけている。工場側の供給能力には限りがあり、多くの工場では品切れののぼりを掲げているが、それでもわずかな望みをかけて待機する人々が後を絶たない。インドネシア政府は事態を緩和するため、液体酸素および10万台規模の酸素濃縮器を国外から調達すると発表した。 薬品も品薄だ。インドでは抗ウイルス薬のレムデシビルが品薄となったが、現在インドネシアではイベルメクチンが入手困難となっている。コロナ治療目的でのイベルメクチンの使用は正式に認可されていないが、病院が満床となり自宅での治療を余儀なくされた人々の親族から需要が殺到している。 命の選択を迫られる 医療システムは崩壊の危機にある。主だった病院ではICUが満室となり、手の打ちようがないことから患者の受け入れを拒否している状態だ。オーストラリアの『news.com.au』は7月14日、「オーストラリアの隣国であるインドネシアは新型コロナの感染爆発と闘っており、医療システムは瀬戸際に追いやられている」と報じた。 マレーシアのスター紙は、助かる見込みがより高い患者を優先的に治療する命の選択がインドネシアで始まっている、と報じる。呼吸器を使用して4〜5日経っても重症患者に回復の見込みがない場合、医師たちは酸素の供給を止め、ほかの患者に機会を振り分けるという厳しい決断を迫られている。 ===== 感染のまん延により、医療機関の運営自体にも危機が迫る。英ガーディアン紙が現地メディアの報道として伝えた情報によると、酸素が底をついたり、医療スタッフが感染により出勤できなくなったりといった事態が相次いでいる。これにより病棟の運営が不可能となり、ICUを一時的に閉鎖する医療機関が出始めている模様だ。ある病院では病棟前の庭をICUに転用するなど可能な限り受け入れを続けているが、必要な医薬がない状態が10日間も続いており、仮に入院できたとしても必要な治療を受けられない状態だ。 倒れる医療スタッフたち ワクチンに疑念も 過酷な状況のなか、前線で働く医療スタッフの負担は甚大だ。医師たちのなかからも、ほぼ毎週のように感染による死者が出ている。ジャカルタのある医師は『news.com.au』に対し、「一緒に働いている人が軒並み倒れていっている」と悲惨な状況を語る。 医師たちは2回のワクチン接種を受けているが、それでも突破感染が止まらない。英テレグラフ紙は、ジャワ島中部の病院において、医師たち15人が感染したと報じている。自身も感染したというある医師は同紙に対し、人手不足で医師たちは過労状態にあり、このような状態ではワクチンを打っていたとしても免疫力が十分に発揮されない、と説明している。 こうした体調の問題とは別に、ワクチン自体の効果も疑問視されている。6月には350人を超える医療関係者が新型コロナで死亡しており、インドネシア医師会はほぼ全員が中国シノバック社のワクチンを接種していたことを明らかにした。英ガーディアン紙は6月末、「インドネシアでのコロナ死でシノバック・ワクチンへの疑念が加速」と報じていた。さらに、インドネシアでシノバック製ワクチンの治験を主導してきた責任者が今月死亡しており、現地メディアは新型コロナが死因だったと報じている。 捉え方は割れており、現地保健省のスポークスマンは、医療関係者はウイルスの脅威にさらされる機会が多いために感染数が多くなっており、ワクチンの効果に問題はないとの見解を示している。一方、実質的に効果の薄い「水ワクチン」ではないかとの疑念が一部でささやかれはじめており、とくにデルタ株に対してはぜい弱だという可能性が指摘されている。 同様の指摘はインドネシア国外からも挙がっている。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、同じくシノバック製を採用するタイはすでに、医療関係者に対してファイザーやアストラゼネカ製などを追加接種する方針を固めたと報じている。 インドネシアのパンジャイタン調整相は今週、仮に最悪の状況に突入したならば、新規感染者数は現状を2万人以上上回り、1日あたり7万人に達するのではないかとの見通しを示した。当面は予断を許さない状況が続きそうだ。 ===== Indonesia’s Covid-19 crisis deepens: Delta variant behind surge of cases taxing hospitals Delta variant leads to record high COVID cases and deaths in Indonesia | DW News

Source:Newsweek
感染拡大のインドネシアは第2のインドの様相 医療システム限界、続々と倒れる医師たち