2021
07.16

失業に姉と母の死…どん底に落ちた私に人生を取り戻させた起業の「夢」

国際ニュースまとめ

<会社をレイオフされ、さらには子供4人を抱えて母をコロナで亡くす。心が折れたが、ネイル店を始めてからは全てがハッピーに> 2018年の末まで、私はITアナリストだった。6年間続けたが、この年の12月にレイオフされた。 翌月、40歳の誕生日を祝う盛大なパーティーを開く予定だったから、ひと息つくタイミングとしては悪くなかった。3カ月くらいで仕事を見つけようと、私は決心した。 けれども、現実は甘くなかった。たくさんの求人に応募したが、面接に全く進めないまま3カ月が過ぎた。さらに3カ月が過ぎ、貯金が乏しくなり始めた。その頃は14歳と4歳の子供を抱えていた上、母の面倒も見ていた。一日中泣き続け、完全に心が折れた。 20年1月、ようやくパートの仕事にありついた後、ネイルスクールに行くことに決めた。私はある男性の友人に、定期的にペディキュアとマニキュアをしてあげていた。彼は理髪店を経営しており、空いている部屋があるから、そこでネイルの仕事をしてはどうかと言ってくれたのだ。 ところが3月に、1歳上の姉が心臓発作で急死した。大ショックだった。これで2人のわが子だけでなく、姉の2人の子と母の計5人の面倒を見ることになった。 家族全員が新型コロナウイルスに感染 ネイルスクールで学ぶ計画も、コロナ禍のせいで中止せざるを得なかった。8月には、私を含めて家族全員が新型コロナウイルスに感染した。9月8日には、母が新型コロナ感染症で亡くなった。 立て続けに起こったさまざまなことを頭から振り払いたくて、20年10月から3カ月間、ネイルスクールでみっちり学ぶことにした。同時に、自分が始めたい男性向けネイルサロン「マン・ケイブ・ネイルケア・フォー・ジェントルメン」のビジネスプランを描き始めた。 講師やクラスメイトは、なぜ男性専用のサロンをやりたいのか、それもどうして足を専門にするのかと、いつも聞いてきた。この質問には「足のお世話をしたいから」としか答えられない。今でも私は、マニキュアよりペディキュアをするのが好きだ。 こうして私はネイル専門士になる勉強を続け、州の資格試験にも合格。今年4月には、念願の男性専用ネイルサロンをオープンした。 店のウェブサイトで予約を受けるときには、音楽やテレビ番組の好み、好きなドリンクを書いてもらう。予約の日時にお客様が来店すると、もうお好みの環境が整っているという仕掛けだ。 ===== サービスは個室で行う。部屋は照明を落としたリラックスできる雰囲気で、お望みなら86インチの壁掛けテレビを見られる。お客様が部屋に入ったときの第一声は、たいてい「これはいいね!」だ。 お客様にはいつも「施術後に靴を履くと、きっと感触が違いますよ」と言う。そのとおり、一人残らず感触の違いに驚いている。大げさに反応してくれているのかと思うこともあるが、きっと実感なのだろう。 サウスカロライナ州には私の店のようなサロンは、ほかにないだろう。既に故郷の同州チャールストンに2号店を開くために、準備を始めている。いずれは、ネイルの店を始めたい人たちに助言する仕事もやってみたい。 ITアナリストの仕事も悪くはなかったが、企業に勤めていると自由にならないこともある。今はそんなことは一切ない。全ての時間が私のもの。最高にハッピーだ。

Source:Newsweek
失業に姉と母の死…どん底に落ちた私に人生を取り戻させた起業の「夢」