2023
05.13

スーダン内戦にロシアの影。国軍と互角の戦いをする「RSF」と民間軍事会社「ワグネル」の関係とは?

国際ニュースまとめ

スーダンの準軍事組織RSFの戦闘員(2023年4月23日にRSFが公開した動画より)AFP PHOTO / HO / SUDAN RAPID SUPPORT FORCES (RSF)スーダンの準軍事組織RSFの戦闘員(2023年4月23日にRSFが公開した動画より)AFP PHOTO / HO / SUDAN RAPID SUPPORT FORCES (RSF)

合わせて読みたい:異例すぎるロシアの軍事パレード。戦車は1両のみ。第二次大戦時代のT-34だった

内戦状態に陥ったスーダン。4月15日以降、国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間で激しい戦闘が続いている。両者は約30年間にわたって独裁を続けてきたバシール前政権を2019年に崩壊に追い込んだが、仲間割れをして武力による権力争いへと発展した。

民兵組織が母体で歩兵部隊中心のRSFが、航空兵力や戦車を持つ国軍と互角に戦えているのは、なぜなのか。

国際協力機構(JICA)スーダン事務所長の坂根宏治さんは当初、戦闘は「1日か2日、長くて1週間で終わるだろうと思っていた」と明かした上で、RSFにロシアの民間軍事会社「ワグネル」が関与している可能性を指摘した。「ワグネル」は、ロシア・プーチン政権の意向に沿って行動する傭兵組織として知られ、ウクライナやアフリカ各地などで暗躍している。

坂根さんは戦闘が続く首都ハルツームから、国連や自衛隊の協力で4月28日に帰国したばかり。都内のJICA本部で5月12日に開かれたメディア向けの勉強会をQ&A方式でまとめた。

メディア向け勉強会で話すJICAスーダン事務局長の坂根宏治さん(2023年5月12日撮影)メディア向け勉強会で話すJICAスーダン事務局長の坂根宏治さん(2023年5月12日撮影)

Q:RSFとはどんな組織ですか?

そもそもこれは2003年以降、スーダン西部のダルフールと呼ばれる地域で虐殺行為を行っていたジャンジャウィードという民兵組織が前身です。これが、名前を変えてRSFになったんです。(独裁政権を率いてきた当時の)バシール大統領が、ダルフールを攻略したくて、「それであれば前線で虐殺でも何でもやります」と引き受けた。バシール政権の寵愛を受けて、首都ハルツームまで来てRSF(即応支援部隊)と改名しました。

編注:ダルフール紛争

スーダン西部ダルフール地方では、アラブ系と非アラブ系の民族対立が悪化。2003年に国軍・アラブ系民兵と反政府勢力の本格的な武力衝突に陥った。30万人を超える市民が命を奪われ、「世界最悪の人道危機」と呼ばれた。ジャンジャウィードはこの時中央政府(国軍)側に立って非アラブ系住民を殺害した。RSFは2013年にジャンジャウィードを再編するかたちで発足した。

RSFは通称ヘメティ氏(本名:ムハンマド・ハムダン・ダガロ)が個人で作った軍事組織です。彼はアラブ系のリゼイガット族の出身で、父親の時代にチャドから流れてきました。ラクダなどの警備員をしていたのですが、治安部門を拡充しながら成長してきた人物です。リゼイガット族はスーダンでは少数派なのですが、西アフリカに広く住んでおり、今のRSFはマリやナイジェリアのリゼイガット族を引っ張ってきてメンバーにしています。西アフリカで広く繋がっている遊牧民なので、国境を越えての移動というのを昔からやってきたんですね。

ヘメティ氏は戦利品として金鉱山を分け前としてもらってきた経緯で、金の採掘が資金源の一つになっています。RSFは傭兵部隊としても活動しており、イエメン紛争ではサウジアラビア軍の戦力として働いて、その中でサウジアラビアのムハンマド皇太子から寵愛を受ける。リビア紛争でハフタル将軍側について戦うなどの活動をしてきた。

そうした働きの中で、スーダン政府のナンバー2のポジションまでのし上がりました。彼自身は小学3年生までしか教育を受けておらず、国軍の中枢にいる(士官学校などでの)教育を受けたエリート層とは違います。ヘメティ氏は非常に機転が利き、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻の前日にはロシアを訪問。「これから協力しましょう」と言っています。

憶測ですが、ロシアの通貨ルーブルが経済制裁で使えなくなることを見越して「私には金(きん)があります。金は値崩れしません。その代わりに戦闘機が欲しいです」みたいな交渉をしたのではないかと思います。またヘメティ氏の金鉱山の利権をめぐって、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が興味を示していたとBBCが報じています。

Q:RSFが国軍に対抗できるようになった背景には何があるでしょう?

バシール政権時代に民兵組織「ジャンジャウィード」として活動する中で、国軍やバシール大統領から支援を受けて勢力を拡大してきました。またヘメティ氏にビジネスの才覚があると思います。配下の傭兵をリビアやイエメンに送って謝礼を受け取るという民間軍事会社としての活動もしてきました。

これも噂レベルではありますが、先進国の広告代理店と契約したという話があり、もともとヘメティ氏はメディアに出るのを嫌がっていたんですが、今ではTwitterやFacebookに出す投稿を考えたり、見栄えのいい写真を載せたりするなど変わりました。

「我々は国民を守るために国軍と戦っているんだ」みたいなロジックを堂々と語るようになってきています。こうしたSNS戦略はもともとワグネルが長けていて、ワグネルがRSFにやり方を伝えた可能性があります。

編注:NHKなどの報道によると、マリなどアフリカ西部の広い地域でワグネルが傭兵部隊を展開させているうえ、親ロシアの方向に市民の関心を向かわせるようなSNS上の情報工作を行っているという

Q:RSFと国軍の間で和平が成立する可能性は?

スーダンの地図スーダンの地図

なぜRSFと国軍がここまで互角に戦ってるのか、分からないです。

自分を含めてスーダンを知っている多くの人は、1日か2日、長くて1週間で終わるだろうと思っていました。戦車があり、戦闘機があり、圧倒的に軍事訓練しているスーダン国軍と、民兵組織が成り上がっただけで歩兵中心で戦車も持っていないRSFが互角に戦えるとは思っていなかったのです。しかし実際には1カ月近くたっても互角に戦っていて、地図上の支配地域も見てもかなり広い。

おそらく自分達の力だけでなく、RSFに支援している国々の関与があるのではないかと思います。戦闘を止めるのであれば、そうした国々が会話のテーブルに着く必要があります。

サウジアラビアは仲介役のテーブルについた一方で、(ウクライナ戦争を続ける)ロシアは会話のテーブルに入れない状況が続いていますので、ここが難しいところだと思います。

…クリックして全文を読む

Source: HuffPost