05.05
『カリオストロの城』は実在するが、映画とは全く似ていない。その理由とは?
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宮崎駿監督のアニメ映画『ルパン三世 カリオストロの城』が5月5日午後9時から、日本テレビ系の『金曜ロードショー』で放送される。
映画に登場する「カリオストロ城」のモデルとも言われる城がイタリアに実在することはご存じだろうか。筆者も実際に2018年9月にイタリア旅行をした際、その城に立ち寄ったことがある。しかしその城の姿は、映画とは全く似ていない物だった。一体どういうことなのか。
■バスを乗り継いで城塞都市に到着
アドリア海に面した港町リミニから、路線バスで揺られること40分。郊外のバス停でマイクロバスに乗り換えてさらに20分。断崖に囲まれたちょっとした岩山に到着した。坂道を上って門をくぐり、石畳をマイクロバスが登っていく。そこには、中世と変わらない石造りの城下町が広がり、山頂には荘厳な砦が見えた。城塞都市サンレオだ。
サンレオの地名は、4世紀初頭にレオーネという石工が、キリスト教の布教活動をしたという伝説に由来する。14~15世紀に入ると周辺領主の激しい争奪戦が繰り広げられた。1441年にウルビーノ公国のフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ公が手中に収め、ルネサンス期の華麗な砦が建造された。
このサンレオ城砦。曲線を多用した丸っこい姿をしており、映画に登場したカリオストロ城とは全く似ていない。カリオストロ城は、多くの尖塔が立ち並ぶ鋭角的なデザインだからだ。モデルになったのなら、なぜこんなに違うのだろう。
実は18世紀、「カリオストロ伯爵」と呼ばれた人物がサンレオ城砦に投獄されていたのだ。この人物は、宮崎駿監督の映画に登場する「ラザール・ド・カリオストロ伯爵」の名前の由来になったとみられる。調べてみると、「カリオストロの城」という出自が共通していることから、「映画のモデルになった」と噂が広まっただけで、実際にこの城そのものが映画のモデルになったというわけではないようだ。
■本物のカリオストロ伯爵は「天才詐欺師」だった
実在したカリオストロの本名は、ジョセッペ・バルサモ。「天才的な詐欺師」として歴史に名を残している。
1743年、イタリア南端のシチリア島に生まれ。錬金術師、医師、占い師など様々な肩書きを名乗って、ヨーロッパ諸国の宮廷に潜入。アラビアで生まれた「アレッサンドロ・カリオストロ伯爵」と称していたが、名前も経歴も真っ赤なウソだった。
フランスのマリー・アントワネット王妃が男児を出産するという予言を的中させたことで名を馳せ、貴族階級から多額の金を巻き上げていた。しかし、同王妃に関連した「首飾り事件」に伴い、詐欺容疑で逮捕。無罪放免されたものの地位は失墜する。
1791年には、秘密結社フリーメイソンの分派の拠点をローマに設置したことが咎められて、教皇庁に異端の容疑で逮捕される。カリオストロは終身刑となり、教皇領となっていたサンレオ城砦に送られて4年後に亡くなったという。
■カリオストロ伯爵が収監された牢獄に行ってみた
筆者は、サンレオ城塞を見学した際、カリオストロが収監されていた「井戸の牢獄」という部屋を見学した。6畳ほどの部屋には、小さい窓と木のベッドがあるだけ。天井の穴から、カリオストロは釣り下げられて入獄し、食事も上から差し入れられた。
教皇庁は、このような厳重な警備体制を敷くことで、「天才的な詐欺師」が脱獄しないように警戒していたのだろう。イタリア人とみられる家族連れの観光客で、狭い部屋はいっぱいだった。現在では石壁に新しくドアが設置されて、自由に出入りできるようになっていた。
狭い窓の隙間から、山腹に広がる中世さながらの城下町が見えた。「生前のカリオストロもこの光景を眺めていたのかな」と、思いを馳せた。
(※2020年11月20日公開の記事を元に加筆編集しました)
Source: HuffPost