2021
07.06

米軍の撤退と共に壊走するアフガン軍部隊 支配地域広げるタリバン

国際ニュースまとめ

<米軍の撤退に伴い、イスラム原理主義勢力タリバンが勢力伸張。アメリカ史上最長20年間の戦争は何だったのか> アフガ二スタン治安維持部隊の隊員1000人以上が7月4日、国境を越えてタジキスタンへの撤退を余儀なくされたと報じられた。アフガニスタン北部で勢力を拡大しているタリバンの武装集団に圧倒されたかたちだ。 こうした緊張の激化は、アメリカ軍がアフガニスタンからの撤退を進める中で起きたものだ。アメリカはこれまで、2001年9月11日に起きた同時多発テロ以降、20年近くにわたって同国で戦闘を行ってきた。 「タリバンがすべての道路を封鎖したため、これらの隊員は、国境を越える以外に行き場をなくしていた」と7月5日、アフガニスタン政府のある高官はロイター通信に対して語った。 アメリカ軍は7月2日、同軍にとってアフガニスタン最大の航空拠点だったバグラム空軍基地からの撤退を完了した。これは、すべての外国部隊の撤収完了に向けた動きの1つだ。北大西洋条約機構(NATO)もすでに部隊の引き上げを始めており、アメリカがアフガニスタンから完全撤退する前に、撤収プロセスを完了する見込みだ。 ただしアメリカ軍は、今後も約650人の兵士がアフガニスタンにとどまり、首都カブールにあるアメリカ大使館の警護や、カブール国際空港の警備支援などの任務を担う。 24時間で9地区がタリバンに奪われる アフガニスタンの地元メディア、TOLOニュースは7月4日、同国の9つの地区がわずか24時間のうちにタリバンの手に落ちたと報じた。 アフガニスタン軍特殊作戦部隊の司令官を務めるヒバトゥラ・アリザイ少将はTOLOの取材に対し、「これまでの24時間に我々は、ラグマーン州、カーピーサ州ニジラブ郡、パルヴァーン州シーンワーリー郡、ガズニー州で作戦を遂行し、敵勢力に人的被害を与えた」と語った。 最近になって武力衝突が相次ぎ、後退を余儀なくされている状況においても、ロイターの報道によれば、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領は、自国の治安部隊が紛争に対処する能力を十分に備えているとの主張を変えていない。 アメリカのジョー・バイデン大統領は、2001年に発生したアメリカ同時多発テロから20年にあたる9月11日までに、アフガニスタンからアメリカ軍を撤退させるという目標を掲げている。 バイデンは6月25日、「我が国の軍隊は撤退するものの、アフガニスタンへの支援が終わるわけではない」と発言した。ホワイトハウスで行われた、ガニ大統領との会談を前にした談話だ。 アメリカ史上最長の戦いとなっているアフガニスタンでの戦闘に関して、バイデンはかねてから撤退を主張してきた。この戦闘は、アメリカ同時多発テロの黒幕とされたウサマ・ビンラディンをはじめとする国際テロ組織アルカイダの主要メンバーの行方を追う中で始まったものだ。 ===== バイデンの前任であるドナルド・トランプ前大統領は2020年の時点で、2021年5月1日までにアメリカ軍を完全撤退させることでタリバンと合意していた。だが、バイデン政権はこの合意よりも撤退が長引くことを示唆し、9月11日をめどに撤退を完了する方針を明らかにした。しかし結局、アメリカはこの期限を待つことなく、撤退を完了させるとみられる。 アフガニスタンに駐留するアメリカ軍の司令官であるオースティン・スコット・ミラー陸軍大将は、アフガニスタン軍への指揮権移譲を見届けるため、今後も同国にとどまる予定だ。 国防総省のジョン・F・カービー報道官は7月2日、記者団に対し、「我々のアフガニスタンにおける任務は続く」と述べた。「我々は、8月末までにアフガニスタンから撤退するとした大統領の指揮に従って、安全かつ秩序だった撤退を実施し続ける」 タリバンは、トランプ政権との交渉の一環としてアメリカ軍への攻撃を中止した。だがその間も、新たな地域に勢力を拡大し、アフガニスタンの政府および治安維持関連施設への攻撃は続けていた。 TOLOの報道によると、7月3日には、タリバンの兵士20人からなる武装勢力が、国境警備隊の詰所を攻撃したという。これは、アメリカ軍がバグラム空軍基地からの撤退を完了した翌日のことだ。 (翻訳:ガリレオ)

Source:Newsweek
米軍の撤退と共に壊走するアフガン軍部隊 支配地域広げるタリバン