03.04
「10年前、歌手になりたくて挫折した自分に伝えたい」YouTuberのあさぎーにょがSunny Sunnyとしてメジャーデビュー
「どうして歌手になりたいの?」
オーディションでそう聞かれ、うまく答えられずに挫折した女の子が、10年後、ソニー・ミュージックからデビューなんて、誰が想像できたでしょうか。
2023年3月2日、YouTuberでクリエイティブアーティストのあさぎーにょさんが、「Sunny Sunny」としてソニー・ミュージックで音楽活動を本格的にスタートしました。
あさぎーにょさんは、現在80万人以上の登録者がいる人気YouTuber。2019年に投稿した、Vlogと短編映画を融合させたような映像作品は「令和時代の先駆け」とも評され、2023年2月時点で、国内外で5500万再生のヒットを記録。
他にも原宿に店舗を構えるアパレルブランド「POPPY」を手がけたり、中国のSNS「weibo」の祭典で受賞したりするなど、YouTubeの枠を越え、クリエイティブアーティストとして幅広い活動を続けています。
そんなマルチな活躍を見せるあさぎーにょさんですが、実は物心ついた頃からずっと抱き続けていた夢は「歌手」でした。
「どうして歌手になりたいの?」オーディションで答えられなかった暗黒時代
歌手になりたい。ずっと抱き続けていた夢を胸に大学を中退し、10年前に関西から上京したあさぎーにょさん。“セオリー”通り、路上ライブをしたり、オーディションを受け続けましたが、結果は惨敗だったと言います。
「オーディションに合格するとか、音楽事務所の人に声をかけてもらうとか、そんな今思えば“大きすぎるワンステップ”ばかり追い求めては、『なんで上手くいかないんだろう』と落ち込んでいました」
オーディションで「なぜ歌手になりたいの?」と聞かれ、言葉に詰まってしまうこともあったそうです。
「その頃はなぜ自分が音楽をやりたいのか自分の中から答えが導き出せなくて、人生で1番の“暗黒時代”でした。そうして夢だった音楽から離れて、まず始めたのがYouTubeの毎日投稿でした」
YouTubeでファッションやメイク、Vlogなど様々なあさぎーにょさんを発信していくうちに、徐々にファンや仲間が増えていき、今ではYouTubeやTikTokなどSNSの総フォロワー数は300万人に。
音楽についても、「勝手にCM作ってみた」シリーズでお菓子などのイメージを歌と映像にしてみたり、「新しい音楽の届け方」としてオリジナルのパジャマのタグにQRコードをつける形で届けたりするなど、あさぎーにょさんならではのユニークな方法で表現を続けていきました。
なぜ歌手の“王道”へ?ソニー・ミュージックからデビューしたきっかけ
そんな既存の枠を越え、時代を先駆ける活躍を見せるあさぎーにょさんが、なぜ“王道”とも言える大手レコード会社からデビューに至ったのでしょうか?聞くと、「最高のチームに出会えたからです」とあさぎーにょさん。
「最初にソニー・ミュージックの方と出会ったのは2018年の『Feat.ソニーミュージックオーディション』でした。そのオーディションはあくまで一プロジェクトで、グランプリをとって所属することを目指すものではなかったので直接今回のデビューとは関係ないのですが、そこから交流はずっと続いていました」
あさぎーにょさんは、これまでプロジェクトごとに音楽を作ってきたものの、それぞれ単発で、「一貫した音楽の世界観」までは作れていなかったと話します。
「アーティストとして伝えたいメッセージやコンセプトを音楽で表現していきたい。今携わって下さってる方々と一緒に世界観を作りあげたい!と思ってデビューを決意しました」
なぜ「あさぎーにょ」ではなく「Sunny Sunny」名義に?
あさぎーにょさんの決意は、「Sunny Sunny」という別名義で活動することにも表れています。
キーワードは「おひさま」。「Sunny Sunny」というプロジェクト名には、「日向(明るく楽しくワクワクすること)も日陰(思慮深く考えることや、時には悲しく思うこと)も抱きしめたい」という思いが込められていると、あさぎーにょさんは語ります。
「全ての活動の根底には『ワクワクを抱きしめよう』というテーマがあります。音楽を通して、おひさまが照らす先にある“日向”だけでなく、“日陰”にも光を当てて、大切にしたいんです」
「YouTubeでは親近感を持って伝えられる分、時に小さなネガティブな感情でもダイレクトに伝わりすぎてしまうことがあるんです。でも音楽なら、日陰も私らしく表現できると思っています」
デビュー曲となる『One Sunny Day』には、これから「Sunny Sunny」として伝えていきたい思いをストレートに詰め込んだそうです。特にお気に入りのフレーズは、『いつでもドラマチックが覗いてる』。
「みんなの人生の些細な一瞬や、平凡に思える日常のワンシーンに、物語の始まりのような“ドラマチック”なことがあるかもしれない。そう思うと、いつもの風景でも見え方が変わってくると思います。そうすると自分の行動も変わって、会話が生まれて、本当に物語がどんどん繋がっていくかもって思えるんです。不確定な時代だからこそ、そんな期待やワクワクを自分に抱けるきっかけに、Sunny Sunnyの音楽がなれればいいなと思っています」
「正直、迷いました」“今までの自分”を越える時、あさぎーにょさんがしていること
あさぎーにょさんはこれまでにも、YouTubeの毎日投稿をやめたり、アイコニックな金髪ボブをやめるなど、“今までの自分”を越えるための決断を何度もしてきました。今回のデビューもまた、別名義で本格的な音楽活動をする大きな決断。迷いはなかったのでしょうか?
「正直、最初はとても迷いました。何のために音楽をやるのか、なぜ名前を変える必要があるのか、自分をとことん分析しました」
“今までの自分”を越えるために、自分と向き合い深く掘り下げる時、あさぎーにょさんは紙のノートに自己分析を徹底的に書くそうです。
「毎日投稿をやめる時もそうでしたが、これまでにも自分の軸がブレることがありました。やっぱり目的や目標を見失った時はしんどいですよね。でも前に進まないといけないし、合ってるかどうかもわからない。無我夢中な時間はめちゃくちゃ辛いけれど、ノートに自分の好きなことや苦手なことと、どういうふうな言葉をもらったら嬉しいかなど、人生を何度も振り返って書き込みました」
その迷いは強さになる。あさぎーにょさんは今回深く自分と向き合う中で、「音楽で人生という物語の一瞬一瞬を照らしたい」というキーワードを、自分の中に見つけることができたと言います。
「やりたいことがない」「自信がない」そんな人に伝えたいことは?
自分のやりたいことや夢をどんどん実現していくあさぎーにょさんの元には、「やりたいことが見つからない」「自信が持てない」などの声も多く寄せられるそうです。そんな人たちにあさぎーにょさんは、「どんな小さなワクワクでも抱きしめてほしい」と背中を押す。
「好きなことがないって言う人もいますが、絶対に何かあると思うんです。ご飯を食べることでも、ペットと遊ぶ時間でもいい。そういう小さなワクワクを抱きしめて、大切にすることができたら、ちょっとずつそれが膨らんでいって、誰かと共有したり、共感したりして、もっとワクワクが広がっていく。そしたら、『こんなこともしてみようかな』ってチャレンジする気持ちが芽生えていくはずです」
この言葉は、上京して挫折を繰り返していた10年前の自分にもかけたい言葉だと、あさぎーにょさんは言います。
「10年前の自分に今だったら伝えられるのは、目の前の人が感動してくれたとか、単純に自分の好きな歌が歌えていることとか、そういう幸せを抱きしめてほしいということです。そうすれば、あんなに自分を否定せずにいられたんじゃないかと思います」
あさぎーにょさんにとって「ワクワク」とは、不確定の未来に恐れや不安があったとしても、「自分に期待する気持ち」。
「通勤や通学をする時、掃除をする時、散歩をする時。ふとした日常にSunny Sunnyの音楽が寄り添って、ワクワクを見つけるきっかけになれば嬉しいです」
Source: HuffPost