07.05
カナダで気温49℃、森林火災で町の9割が火の海に 火災積乱雲に警戒
<カナダ西岸の町で、国の観測史上最高となる気温49.6℃を記録。高熱と乾燥が大規模火災を招き、町の9割が消失した。州内では、特殊な「火災積乱雲」による事態悪化が懸念される> ヒートドーム現象による高気温が続くカナダで、気温が観測史上最高を記録した。バンクーバーが位置する西岸のブリティッシュ・コロンビア州(以下「B.C.州」)では、高温と乾燥した空気によって100件超の山火事が発生し、現在も進行している。 同州の山間にあるリットンの町では、気温が華氏121度(摂氏49.6度)に達し、カナダ観測史上最高を記録した。高気温はその後、町内で大規模な森林火災を招くことになる。カナダ民放局のCTVは地元紙の情報として、7月1日朝までに被災面積が2万エーカーに達し、リットンの町の90%を焼き尽くしたと報じている。 火災発生を受けて町民250人全員に対して避難命令が出されたが、これまでに2名の死亡が確認された。町長はカナダ放送協会のインタビューに対し、「悲惨な状況だ。町全体が炎に包まれている」と述べている。強い南風にあおられ、火災は一時、時速10キロから20キロの早い速度で北側へ広がったとみられる。 当時炎は人間の腰から腹ほどの高さに達し、町の至るところで家屋が火に呑まれた。町長は自らの避難の瞬間を振り返り、「町を車で抜けたが、もう一面の煙と炎で、電線は至る所で切れて垂れていて」と述べる。火は猛烈な勢いで広がっており、町の一部で煙が確認されてから一帯が火に呑まれるまで、ものの15分ほどだったという。ある住民は「ただただ信じられません。理解が追いつかない」「私たちの町がまるごとなくなったんです」と呆然と語っている。 Wildfire in British Columbia Forces Evacuation Canada heatwave: resident films escape from wildfire as flames engulf Lytton village Driver surrounded by smoke, flames as wildfire rages in BC 列車火災が延焼か ほかにも山火事は173件 町を壊滅状態に追い込んだ火災は自然発生したものとみられていたが、 その後の調査により、町内を通過する列車が火元になった可能性が浮上した。渓谷を流れるフレーザー川沿いに広がるリットンの小さな町は、南北に走る主要道路と並行し、鉄路が走っている。 町に住む夫妻はカナダのグローバル・ニュースに対し、列車の下で燃える炎を見たと証言している。また、同じ目撃談が現地付近の先住民族からも寄せられた。列車はリットンの町を通過した後に出火が確認され鎮火しているが、これ以前に自然豊かな沿線の草木に火種を撒き、高気温と乾燥で町全体に延焼した可能性が疑われる。 リットンの例に限らず、B.C.州内ではほかにも火災が続出している。公共放送のカナダ放送協会は7月3日、同州内の消防隊が170件以上の森林火災への対処を迫られていると報じた。一部地域では煙によって視程が悪化しており、地上と上空からの消火活動が困難になる恐れがあるという。 ===== バンクーバー・サン紙によると、7月4日午前の時点でも173件の森林火災が同時進行しているようだ。州森林火災局はこのうち42%が制御不能の状態にあり、さらに16%について判断を保留していると発表した。 火災積乱雲の発生で悪循環の危険も 大規模火災特有の気象現象により、状況はさらに悪化する可能性がある。広域で火災が発生すると、高熱による上昇気流によって煙の粒子を含む空気が上空へと吹上げらる。空気中の水分は高度が上がるにつれて冷却されて凝縮し、やがて不純物を含む積乱雲を形成する。「火災積乱雲」と呼ばれる雲の誕生だ。 Absolutely mind-blowing wildfire behavior in British Columbia.Incredible & massive storm-producing pyrocumulonimbus plumes. pic.twitter.com/kH39IuX1ez— Dakota Smith (@weatherdak) July 1, 2021 積乱雲は一般に、強力なダウンバーストを発生させることがある。これは、上空で冷やされて重くなった空気が下降気流を形成し、鉛直下方向に強力に吹き付ける現象だ。森林火災の上空で火災積乱雲が形成されると、地面に到達したダウンバーストが炎と燃えさしを周囲に運び、火災を周辺域に広げる恐れがある。ダウンバーストの到達範囲は広く、火災の発生域から数キロないし数十キロ離れた地域にまで及ぶことがあるため、近隣の街では警戒が必要だ。 これに加え、落雷の発生という面でも火災積乱雲は厄介だ。火災積乱雲は2019年にオーストラリア南部のバーンズデールで起きた大規模な森林火災の際にも発生しており、落雷が森林に達すれば新たな野火を招きかねないとして問題視されていた。今回のカナダでも、7月3日までの過去24時間にB.C.州内で99件の森林火災が発生しており、うち7割近くが落雷に起因するものとなっている。 (Bureau of Meteorology, Australia) 火災積乱雲による雷は、通常の積乱雲よりも大きなエネルギーを長時間かけて放出する性質があるため、落雷による火災を招きやすい。これは、電荷の違いによるものだ。夏季の積乱雲は通常、雲内部に溜まった負の電荷を中和しようとする「負極性落雷」が多い。一方で火災積乱雲は構成粒子の違いにより、逆の「正極性落雷」を発生させることが多い。ひとたび落雷が起きれば高エネルギーにより雷撃点で火災は起きやすく、森林火災と積乱雲が互いを呼び込む悪循環が懸念されている。 B.C.州では現在も火災が継続しており、緊張が続く。州の消防情報官はカナダ放送協会に対し、高気温と空気の乾燥が依然として継続しているため、火災を招きやすい状況が続く見込みだとコメントしている。 ===== Wildfire in British Columbia Forces Evacuation Canada heatwave: resident films escape from wildfire as flames engulf Lytton village Driver surrounded by smoke, flames as wildfire rages in BC
Source:Newsweek
カナダで気温49℃、森林火災で町の9割が火の海に 火災積乱雲に警戒