2023
02.07

鳥インフル、人間の致死率は5割超。新たなパンデミックの可能性を専門家が警告

国際ニュースまとめ

鳥インフルエンザの感染拡大で、世界的な何百万羽もの鳥が死んでいる。その中で今大きな懸念となっているのが、哺乳類への感染が広がるかどうかだ。

感染症専門家のアイザック・ボゴッチ博士は、変異株が人間を含む哺乳類に広がった場合「致命的な結果をもたらす可能性がある」とカナダ公共放送CBCで指摘する。

「これはエピデミック(地域内での拡大)とパンデミック(世界中への拡大)の可能性がある感染症です」「人々がどれほど大きな問題だと認識しているでしょうか」

多くの鳥が犠牲になっている

鳥インフルエンザA(H5N1)が最初に確認されたのは1990年代後半。初めは養鶏場の鳥(家禽)への感染が主だった。

しかし、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によると、2020年には家禽のウイルスと野鳥のウイルスとの遺伝子交換によって、野鳥に感染しやすい変異株が登場。渡り鳥間や、渡り鳥から家禽への感染が容易になった。

2022年以降、アメリカでは鳥インフルエンザで死んだニワトリやアヒル、七面鳥などの家禽の数は5800万羽以上に上る(養鶏場で鳥インフルエンザが確認された場合、さらなる拡散を防ぐため、通常は農場の家禽はすべて殺処分される)。

また同時期に、アメリカでは6000羽近くの野鳥の鳥インフルエンザの症例が確認された。

懸念される哺乳類への感染

そして今懸念されているのが、鳥類だけでなく、人間を含めた哺乳類での感染拡大だ。

すでにクマやキツネ、カワウソ、アザラシなど、さまざまな野生の哺乳類への感染が確認されている。

人間への感染確認件数は多くないものの、致死率は50%以上になる。WHOの報告書によると、2003年1月から2022年11月25日までに21カ国で868人が感染し、457人が死亡した(死亡率53%)。

イギリス動植物衛生庁のイアン・ブラウン氏は、鳥インフルエンザが新型コロナのようなパンデミックに発展するリスクがあると認識しているとBBCに語った。

「世界的な拡大が心配されます。この感染症に打ち勝つために、国際レベルで新たな戦略を立て、協力する必要があります。 世界全体で問題を解決しなければ、私たちはリスクを負い続けることになります」

岡山県倉敷市で確認された鳥インフルエンザの対応にあたる職員=28日午前、岡山県倉敷市[岡山県提供]岡山県倉敷市で確認された鳥インフルエンザの対応にあたる職員=28日午前、岡山県倉敷市[岡山県提供]

すでに哺乳類の間で感染拡大が起きている

科学者たちの懸念を裏付けるように、哺乳類での感染拡大も確認されている。

スペインでは2022年10月、ミンク農場で鳥インフルエンザの大規模感染が発生した。研究者たちは2023年1月に発表した論文で、ウイルスは最初に野鳥からミンクに感染し、その後ミンクの間に広がったと説明している。

シドニー大学の野鳥ウイルス研究者マイケル・ウィリー氏は「これは哺乳類から哺乳類への感染が非常に現実的であることを示しています」とCBCに述べている。

ミンク農場で働いていた労働者の感染は確認されていないものの、ミンクへの感染が、人間への足がかりになる可能性があると懸念する科学者もいる。

インペリアル・カレッジ・ロンドンのウイルス学者トム・ピーコック氏は、「非常に懸念すべき問題です」「これはH5パンデミックの始まりを明確に示唆するメカニズムです」とサイエンス・マガジンに語った。 

求められる世界的な感染対策

新型コロナウイルスの取材を続けてきたジャーナリストのゼイネップ・ トゥフェックチー氏は、ニューヨークタイムズの寄稿で「鳥インフルエンザによる、さらに致命的なパンデミックが発生する可能性がある」と述べ、警鐘を鳴らしている。

トゥフェックチー氏は記事で「ミンクの上気道(鼻や喉など)は人間への最適な感染ルートになる」というピーコック氏の指摘を紹介。

懸念されるパンデミックの予防策として、検査体制やワクチン開発・生産の強化の他、ミンク農場閉鎖も求めている。

すでに一部は、動物虐待の懸念と新型コロナ感染症の温床になったことから、ミンク農場の閉鎖を決定している。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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Source: HuffPost