11.23
VARの半自動オフサイド技術とは?実はボールに“秘密”があった。正確さでゴールが次々と幻に【ワールドカップ2022】
11月20日に開幕したサッカーワールドカップ。23日には日本代表がドイツ代表とグループリーグ初戦で対戦する(日本時間午後10時キックオフ)。
今大会でもVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されているが、同大会からFIFAが採用した「半自動オフサイド技術」の正確さに注目が集まっている。いくつかのゴールが、いわば“幻”となっているからだ。
どんな技術なのか、改めて紹介する。試合観戦を楽しむ一助として欲しい。
半自動オフサイド技術とは?実はボールに「秘密」
FIFAによると、「半自動オフサイド技術」は、FIFAが同大会から採用した新技術だ。
スタジアムの屋根の下に設置された12台の専用トラッキングカメラを用いてボールと個々の選手の最大29のデータポイントを1秒間に50回追跡。ピッチ上の正確な位置を計算する。
収集された29のデータポイントには、オフサイド判定に関連するすべての情報が含まれているという。
この新技術、実はボールにも“秘密”があった。カタール2022の公式試合球である「アル・リフラ」は、ボール内部に慣性計測装置(IMU)センサーを搭載し、難しいオフサイドを検知するための重要な要素を提供するという。
ボールの中央に設置されたこのセンサーが1秒間に500回、ボールデータを「ビデオオペレーションルーム」に送信。キックポイントを非常に正確に検出することができ、トラッキングデータを組み合わせた上でAI(人工知能)を応用することで、味方のボールがプレーされた瞬間にオフサイドポジションにいたアタッカーがボールを受けると、ビデオ・オペレーションルーム内のマッチオフィシャルに自動的にオフサイドの警告を表示する。
ビデオマッチオフィシャルは、審判に伝える前に、自動的に選択されたキックポイントと選手の手足の位置を計算。自動的に作成されたオフサイドラインを手動で確認し、提案された判定を検証する。
この過程は数秒以内に行われるとしていて、そのためオフサイドの判定をより速く、より正確に行うことができるようになるという仕組みだ。
ピッチ上のビデオマッチオフィシャルとレフェリーが判定を確認した後、判定に使用されたものと全く同じ位置データが、ボールがプレーされた瞬間の選手の手足の位置を完全に詳細に示す3Dアニメーションが生成される。
この3Dアニメーションは、オフサイドの状況を常に最適な視点で表示し、スタジアムの巨大スクリーンに映し出しFIFAの放送パートナー(つまりはテレビ放送など)にも提供されて観客に最も分かりやすい情報を伝えるという。
これらの技術は2021年に開かれたFIFAクラブワールドカップなどのFIFA主催の大会でのライブ中継で試行されて成功を収め、採用に至った。
「開幕戦」からゴール取り消し、メッシもVARに泣く
開幕戦のカタール対エクアドルの一戦(日本時間21日)で、早速技術の正確性が見られる場面があり、SNSでも注目を集めた。
エクアドルが前半3分、FKからヘディングでつなぎ、最後はエンネル・バレンシア選手がゴールネットを揺らしたが、新技術によってオフサイドと判定されたため、ゴールが取り消された。
国際サッカー連盟(FIFA)の映像によると、FKを蹴った直後に11番のミチャエル・エストラダの右足が「半歩」出ていたという。
また、22日に行われたアルゼンチン代表とサウジアラビア代表の一戦でもVARが試合の明暗を分けた。
アルゼンチンは前半10分、リオネル・メッシのPKで幸先よく先制。その後はメッシ、ラウタロ・マルティネスがそれぞれ、相手最終ライン裏のスペースへ飛び出してシュートを決めたが、いずれもオフサイドと判定された。
結果的にアルゼンチンはこの試合でメッシのゴールが1本、マルティネスのゴールが2本VARの技術によって取り消され、試合のペースを掴めなかった。試合は終盤にサウジアラビアが1点を勝ち越して2-1で勝利。
サウジアラビアにとっては“大金星”といえる歴史的勝利で同国は盛り上がった。
SNSでは「これでほぼ誤審は無くなったよね」と歓迎する声がある一方、「オフサイドに厳しいのは良いと思うが行き過ぎた技術介入はサッカーの面白さを奪ってしまう」という意見もあった。
サッカー元日本代表の本田圭佑選手は22日、TwitterでVARやオフサイド判定技術について触れ、「むしろあれだけのテクノロジー使ってるなら副審いらんくない?」とツイートしていた。
Source: HuffPost