2022
11.23

<北朝鮮緊急電話インタビュー>(1)「民飢えさせて発射なんて馬鹿げてる」 ミサイル連射に怨嗟の声 その理由は?

国際ニュースまとめ

「火星17」ミサイル発射実験現場に金正恩氏は妻の李雪柱氏と娘を同行したと国営メディアが伝えた。2022年11月20日の労働新聞より引用。

北朝鮮は11月18日に発射した「火星17型」と見られる新型ICBMを含め、今年に入り少なくとも60数発のミサイル発射実験を実施した。9月後半以降の連続発射については、韓米合同軍事演習に対する対抗措置であり、国防建設戦略の一環であると主張している。

一方で人々の生活は極めて厳しい。老人世帯や病弱者、幼児など脆弱層の中に飢えや病で死亡する人が各地で発生、人道危機状態にある。金正恩政権がミサイル発射実験を繰り返すことを北朝鮮の住民はどう考えているのか? 北部に住む取材協力者が率直に語った。(カン・ジウォン/石丸次郎

アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。今回通話したのは、北部地域でビジネスをしている取材パートナーだ。通話したのは、11月18日に「火星17型」と見られる長距離弾道ミサイルを発射する直前である。

◆戦争勃発の危機ムードはなし

――ミサイル発射実験を繰り返しているが、政府は住民にどう説明していますか?

ただ米国と韓国が戦争演習をしていると簡単に説明し、「緊張を持って動員態勢で暮らせ」と言っています。布置(通達)されたのは、人民班の警備を強化し警備哨所(検問所)をしっかり運営しろという指示だけで、他に非常招集とかはありません。それから戦時非常用品を検閲(点検)せよと。まともなものがないので、何もしませんでした。

――人々は戦争勃発を心配していないですか?

もし今すぐ戦争が起きるとしても、ここの人たちはあまり心配しませんよ。

――なぜですか?

そらそうでしょう? (戦争になったら)上の連中は慌てるでしょうけど、人民は生活が苦しいので、どうにかして飢え死にせずに生きいていこう、それだけしか考えられないんです。

鴨緑江沿いに張り巡らされた有刺鉄線の内側を歩く女性。2021年7月中国側から撮影アジアプレス

◆民飢えさせてミサイル発射なんて馬鹿げたこと

――食べていくのも大変なのに、多額の金がかかるミサイルをやたらと打つことをどう思いますか?

米国が脅かすので、我われは自主権を守るために軍事力を強化しなければならない…講演のたびに(当局は)そう話します。(ミサイル発射の費用が)どれ位かかっているのか、コメで換算していくらなのか、ちゃんと知っている人はいません。

莫大な金がかかっているはずなので、人が飢えて死んでいるのにあんなこと(ミサイル発射)ばかりせず、そのお金で生活を良くしてくれたら、仕事もしっかりやって国に忠誠するのに。核を作ってミサイルを撃つなんて本当に馬鹿げたことだと思います。

――今、人々の暮らしはどれほど苦しいのでしょうか?

我が国の人々は何が大変ですか? 一番重要なのは何でしょうか? 1日3食を食べていた人が、稼ぎがダメになりコメもないので1日2食、1食で暮らしています。すべて米国の封鎖(制裁)のせいだ、コロナのせいだと(政府は)言い訳している。人が生きていくための最低限のことも保障しないくせに、ただ仕事に出よと言われます。本当にあほらしい。

――北朝鮮のミサイルの性能が向上して世界的な技術力を持つようになりましたが、一般住民はどう考えているのでしょうか? 誇らしいこととは思わないのでしょうか?

朝鮮に核や何とか爆弾とか、米国にまで届くミサイルがあっても、それは私たちを守ろうとするものではないでしょう。宣伝では、我われを奴隷にさせないために核大国を作って、困難であっても軍事力を強化するのだと言っていますが。

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