2022
09.25

ネッシーの学名に「エリザベス女王にちなんだ名前」が提案されていた。断念した理由は?

国際ニュースまとめ

エリザベス女王(1960年当時)と、1934年のネッシーを撮影したとされた写真エリザベス女王(1960年当時)と、1934年のネッシーを撮影したとされた写真

ネス湖のネッシーといえば、世界中から注目を集めるイギリスの未確認生物だ。9月8日に亡くなったエリザベス2世女王も1960年、ネッシーの研究に大きな興味を持っていたことが伝えられている。

女王にちなんだネッシーの学名をつけるプランもあったが、あえなく却下された。イギリス王室の知られざる逸話を紹介しよう。

■WWF創設者が女王の側近に手紙を書いていた

イギリスの生物学者ピーター・スコット卿は、1961年から始まった国際NGO「世界自然保護基金」(WWF)の創設メンバーとして知られている。WWFのパンダのロゴは、彼がデザインしたものだ。

動物保護活動に尽力するスコット卿は、未知の動物「ネッシー」に大きな関心を持っていた。1961年には「ネス湖現象調査局」を設立。16年間にわたってネッシーの調査を進めたという。

ネッシーの学名を提案したイギリスの生物学者ピーター・スコット卿。自身が描いたザトウクジラのイラストを手にしている(1974年撮影)ネッシーの学名を提案したイギリスの生物学者ピーター・スコット卿。自身が描いたザトウクジラのイラストを手にしている(1974年撮影)

WWFとネス湖現象調査局を設立する前年に当たる1960年5月、スコット卿は一通の手紙を書いた。それは友人でエリザベス女王の私設秘書を務めていたマーティン・チャーテリス氏にあてたものだった。そこでネッシーに関する最新映像の報告をしたほか、ネッシーに女王にちなんだ学名を付けることを提案していた。

ケンブリッジ大学が保管していたスコット卿のアーカイブを元に、英紙「インディペンデント」オンライン版が2015年9月4日に報じている。

この記事によるとスコット卿は、航空技師ティム・ディンズデール氏が撮影した「湖を泳ぐネッシー」とされる3分間のフィルムについて「非常に印象的」であるとした上で、「この物体は明らかに非常に大きく、私の考えでは、新しい動物か、非常に高価で手の込んだデマかの2つの可能性しか考えられない」とチャータリス氏に報告していた。

また、ネッシーの学名を女王にちなんで「Elizabethia nessiae(エリザベシア・ネシアエ)」とすることを提案していたという。

■「怪物」に陛下の名前をつけていいの?否定的な反応

この手紙を読んだエリザベス女王は、ネッシーの調査に興味を示したようだ。

チャータリス氏は返信の中で「女王陛下はあなたの手紙をご覧になり、その内容に大変興味を持たれました。あなたの調査の進展について、私たちに連絡を取ってくださるよう希望します」と書いていた。

ただし女王の名前にちなんだ学名をつけることには否定的だった。チャータリス氏の返信には、以下のように書かれていたという。

「もし女王の名前をつけるとしたら、その動物が存在するという絶対的な証拠がなければいけません。女王陛下の名前と結びつけてから、最終的にデマだったと判明したら、大変残念です。たとえ実在すると証明されたとしても、長年“怪物”として知られてきた動物に陛下の名前をつけることが適切かどうかは、まったく自信がありません」

■スコット卿が「ネッシーの学名」にこだわった理由

スコット卿はそれでもネッシーに学名をつけることを諦めなかった。

JSTORデイリー」によると、ネッシーを撮影されたとされる水中写真に基づき、ネッシーの学名を「Nessiteraas rhombopteryx(ネッシテラス・ロンボプテリクス)」と名付ける論文が科学誌「ネイチャー」1975年11月25日号に掲載された

「ダイヤモンドのヒレをしたネス湖の怪物」という意味だった。チャータリス氏の反応を受けて、エリザベス女王に由来する単語は避けたようだ。

スコット卿は、ネッシーに学名をつけることにこだわっていた。ネッシーを保護するために、発見前の段階でも学名をつける必要があると考えていたからのようだ。

女王の側近との一連のやり取りを発見した研究者ザック・ベイナム=ハードさんは、英紙「スコッツマン」で以下のように指摘している。

「当時の絶滅危惧種の法律では、その名前を命名しなければならず、ピーター・スコット卿が女王に近づき、怪物に自分の名前を貸すことができると提案した可能性があります」

ーーー

ひとりひとりが、サステナブルな地球環境の中で、自分らしく生きていくためにーー。

ハフポスト日本版は「SDGs」「多様性」「働き方」の三つのテーマを大きな柱としています。時事ニュース、企画特集や個人の声を拾い上げるオピニオンなど多様な記事を発信し、ハフポストの記事から会話を始めること、多くの関係者と協力しながら社会問題を解決することを目指していきます。

…クリックして全文を読む

Source: HuffPost