2022
09.15

<イラク>ISの襲撃から8年 拉致、戦闘員にされたヤズディ青年 新たな人生

国際ニュースまとめ

ISに拉致されたヤズディ女性。IS戦闘員が分配し、強制結婚という形をとって「奴隷」にした。戦闘員どうして転売を繰り返すなどもしている。この女性はISの戦況悪化のなか、銃を持たされてシリアの前線で戦わされた。シリア民主軍によって保護された。(2018年・イラク・クルディスタン地域で。撮影:玉本英子

カナダ政府はISに拉致されたヤズディ教徒の受け入れを表明し、サイフさんは難民としてカナダへ渡った。カルガリーの高校では必死に勉強して、英語を習得。

たびたび悪夢に襲われ、呼吸ができなくなるストレス障害に苦しんだが、ヤズディ教徒の友人に支えられ克服することができた。昨年、地元大学への入学を果たし、化学を学ぶ。将来は医師になるのが夢だ。「いつか自分の経験を振り返り、本を書けたらと思っている」

ISに拉致され、戦闘員にされたヤズディ少年たち。2017年のIS映像に登場した二人は、いずれもシンジャル出身と話し、「ヤズディは悪魔崇拝」などと話す。(IS映像)

ISは、映像の2人のヤズディ少年がイラク軍車両に自爆車両で突撃する瞬間のドローン映像まで公開。IS映像には「殉教戦士」(緑)としてイラク軍車両(赤丸)に向けて突撃させられる様子が映っている。脱出できずに、戦闘で命を落とした少年たちも少なくない。(IS映像)

◆自爆死させられたヤズディ少年も

一方で、IS戦闘員として自爆死させられた少年や、脱出できずに亡くなった女性たちがいる。断ち切られたたくさんの人生。それを思うと、胸が痛む。ISが去った1年後、私はコジョ村を取材した。無人となった村は、襲撃の日から時が止まったままで、いくつもの破壊された家屋が無残な姿をさらしていた。虐殺現場だった空き地には、人骨が散乱したままだった。

コジョ村には死者や行方不明者の写真が並べられている。ひとつひとつの人生が引き裂かれた。(2018年・コジョで・撮影:玉本英子)

ヤズディ虐殺から8年。現地では今も発掘作業が続く。ヤズディ団体の統計によると、ISに拉致された住民は、男女合わせて6400人。うち、およそ2800人が現在も行方不明のままだ。

コジョで住民が虐殺された空き地。現場は土をかぶせてあったが、一部にはまだ人骨が散乱していた。ISは撤退したものの治安状況は不安定で、犠牲者遺骨の発掘調査もできないままだった。(2018年・コジョで・撮影:玉本英子)

(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」2022年8月9日付記事に加筆したものです)

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【ヤズディ教】

ゾロアスター教の流れをくむといわれるが、イスラム教やキリスト教の影響も受けている。イラク、シリア、トルコなどにまたがる地域などに暮らす。イラク国内には最も多く、およそ60万人が暮らしてきた。クルド語を話す。フセイン政権下では迫害され、イラク戦争後はイスラム武装勢力から「邪教」として狙われてきた。ヤジディ教、エズディ教とも表記される。

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Source: アジアプレス・ネットワーク

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